今週は「越境の向き」を考えさせられる週でした。タイ発のキャラクターが日本で商品化され、浴衣姿の日本限定グッズになって東京ソラマチに並んでいます。同じ週にAppleはiPhoneではProと折りたたみ機だけを発表し、ジェトロは強みを維持しつつ現地の実態に合わせて再設計することが重要だと整理した、8カ国102ページの調査を出しました。順に見ていきます。

バターベアが日本で浴衣を着た。9月11日と12日に立て続けに

タイのスイーツ店「Butterbear」のマスコット、通称ノーン・ヌーイが、この夏から秋にかけて日本の3つの売り場に載りました。

エスケイジャパンは7月16日に、カプセルトイ2種(「アクリルゆらゆらマーカー」400円・全5種が7月下旬、「ふわふわデニムポーチ」500円・全5種が9月、いずれも税込)を全国のカプセルトイ自販機で展開すると発表(エスケイジャパン)。イオンファンタジーは9月8日発表・9月11日開始で、モーリーファンタジーやPALOなどに限定プライズ計7種を投入しました(イオンファンタジー)。

そしてマリモクラフトが9月1日に発表した「バターベア ハロースポット」が、9月12日から30日まで東京ソラマチ3階の特設会場で開催中です。ここに並ぶのが浴衣・女子高生・ギャル衣装のマスコット(各2,420円)をはじめとする日本限定グッズで、リリースが名前を挙げているアイテムは23点(マリモクラフト)。初日の9月12日にはバターベアと姉のビアンカベアが初来日。ソラマチひろばで13時と16時の2回、日本初のミニショー&グリーティングが予定され、初日のショップ入場は事前予約制で、当日朝の時点で予約はすべて終了していました(ORICON NEWS、9月12日)。

タイでの位置づけは、さかのぼると2024年7月の時点で既に観光施策の水準にあります。タイ国政府観光庁(TAT)がバターベアを起用した国内観光キャンペーンを実施しており、当時の報道ではタイ国内のファンが約1,000万人、中国で約100万人とされていました(The Nation Thailand、2024年7月19日)。

セラー視点: 日本のキャラクターグッズを東南アジアへ売るのが通常の向きですが、ここで起きているのは逆流です。SEA発のIPが、日本側でライセンス商品化されている。需要の向きが片道でなくなりつつある、という事実がまず読み取れます。

ただし「日本限定だから越境の在庫になる」と短絡はできません。マリモクラフトのリリースは、購入特典のノベルティについて「転売は固くお断りします」と明記しています(同リリース)。プライズ品(景品)やカプセルトイも、物販商品とは流通の建て付けが異なります。仕入れを検討するなら、権利元・ライセンシーの規約と各プラットフォームの出品ポリシーを、商品ごとに確認するのが前提になります。

iPhoneは9月18日にProだけ。標準モデルは9月9日のリリースに出てこない

Appleは9月9日にiPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Maxを発表しました。予約は9月12日午前5時(米国太平洋時間)開始、発売は9月18日(本稿公開の翌日)。プレスリリースが名指しした「65以上の国と地域」には、アジアでは日本・中国・インド・韓国・マレーシア・シンガポール・ベトナムが含まれます(この列挙は例示であり網羅ではありません)。さらに「20の国と地域で9月25日から発売」とされています。米国価格はProが1,199ドルから、Pro Maxが1,299ドルから(Apple Newsroom)。

Appleは同じ9月9日に、折りたたみのiPhone Duoも発表しています。内側7.6インチ・外側5.4インチ、米国価格1,999ドルから、予約は10月16日・発売は10月23日で、対象は70以上の国と地域(マレーシア・シンガポール・ベトナムを含む)。さらに28の国と地域で10月30日から発売されます。純正アクセサリのiPhone Duo Folio with Kickstand(129ドル)とiPhone Duo Case(79ドル)も同時に発表されました(Apple Newsroom)。

一方、標準モデルのiPhone 18はどちらのリリースにも出てきません。背景として、6月15日にMacRumorsが、Appleのカメラレンズ主要サプライヤーであるLargan Precisionの林恩平会長の株主総会での発言として、米国の大口顧客が新モデルの投入を2027年第1四半期に延期した、と報じています(MacRumors、2026年6月15日)。

価格は国ごとにかなり開きます。TechRepublicが9月16日にまとめた256GBの比較では、ProがマレーシアのRM5,499からフィリピンの**₱94,990まで、Pro MaxはマレーシアのRM5,999からシンガポールのS$2,099**まで。ベトナムは38,999,000ドン/41,999,000ドン、タイは48,900バーツ/52,900バーツです。同記事は予約が9月12日にベトナム・シンガポール・マレーシア・タイで始まったとし、フィリピンは価格が出ている一方で同じ発売日が確認できないとしています(TechRepublic)。

セラー視点: 今回発表された新しい筐体はPro、Pro Max、そしてiPhone Duoの3つで、標準モデル向けの新規型は9月9日時点のリリースには含まれていません。そして発売日が9月18日(Pro系)と10月23日(Duo)に分かれています。ケース・保護フィルム類を扱っているなら、今秋の山が2つに割れる日程だ、というのが現時点で確定している情報です。なお本体そのものの越境販売は、各国の型式認証・輸入規制・プラットフォームのブランド保護ポリシーの対象で、アクセサリとは別の話です。

ジェトロの102ページ: マレーシアのスキンケアとタイのペットフードは「送れば売れる」市場ではない

ジェトロが9月3日に「アジア大洋州の消費トレンドおよび国別重点市場調査」を公開しました。調査部アジア大洋州課とシンガポール事務所によるもので、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インド、バングラデシュの8カ国が対象、102ページです。地域横断で抽出されたトレンドは「健康・ウェルネス需要の成長」「体験・自己表現志向の拡大」「コスパ・タイパ重視のスマート消費」「ローカルブランドの主役化」「AI起点の発見・比較・購買支援の浸透」の5つ(ジェトロ)。

越境セラーにとって効く数字は各国章にあります。マレーシアのスキンケアは2025年で約12.8億米ドル、2030年に約20.0億米ドル、年平均約9%の見込み。注目すべきは流通で、2025年時点でも販売の約9割はオフライン、EC比率は1割強にとどまります。ブランドシェアは2025年でSK-IIが約8%、Nu Skinが約6%、Shiseidoが約4%。**上位3ブランド合計で約18%、上位5で約24%、上位10でも約36%**という分散市場です。成分訴求型のSkintificは2024年の1%未満から2025年に約1%まで伸びています(同レポート)。

タイのペットフードはさらに構図がはっきりしています。市場は2025年で約19億米ドル、2030年に概ね35億米ドル。犬向けの年平均成長率約11%に対して猫向けは約15%で、EC比率は約17%、専門店が約31%。そして2024年の輸入品は国内市場の約9%にとどまる一方、タイ自身が犬猫向けペットフードを27億米ドル輸出しています。つまり国内市場より大きい輸出産業を抱えた生産国です。猫向けのブランドシェアはWhiskas約17%、Me-O約11%、NekkoとRoyal Caninが各約8%、Purina ONE約6%で、上位5合計でも約49%。日本勢ではいなばペットフードのCiaoが**猫向けで約3%**まで伸びている、と整理されています(同)。

セラー視点: この2つは真逆の理由で同じ結論に着きます。マレーシアのスキンケアはECが1割強しかないのに誰も市場を支配していない市場で、タイのペットフードは輸入が9%しかない生産国です。どちらも「日本ブランドだから」だけでは説明がつきません。レポートはマレーシアについて、勝ち筋は入口商品で継続利用を取ってからセラム・マスク等で単価を上げる階段型の設計にある、としています。なお同レポートのエグゼクティブサマリーは全体の方針を、品質・安全性・技術力といった強みを維持しつつ、価格、容量、味、気候、宗教、流通、情報接点を現地の実態に合わせて再設計すること、と書いています。

Shopee Japanの8月号: ベトナムで資生堂のフェイスプロテクトパウダー

上の話を実際の売上で裏打ちする材料として、Shopee Japanが8月11日に公開した「2026年8月号 人気急上昇商品」があります。売上額基準の上位に挙がっているのは、ベトナムで資生堂 IHADA フェイスプロテクトパウダー 9gブラジルで小林製薬 ブレスケア(本体50粒+詰め替え100粒のセット)。カテゴリ別のビューティー枠では**フィリピンでサンベアーズの日焼け止め(SPF50+ PA++++、ウォータープルーフ)**が上位です。市場別ではフィリピンが日焼け止め・スキンケア、マレーシアが日焼け防止アイテムとサプリメント・機能性日用品、と整理されています(Shopee Japan)。

セラー視点: 顔ぶれはドラッグストアで買える日用品で、IHADAのパウダーは花粉・微粒子からの保護という機能が評価されたと説明されています。日焼け止めも含め「肌を守る」側に寄っている点は、ジェトロがマレーシアのスキンケアで指摘した「入口商品で日常接点を作る」構造と同じ方向を向いています。

短信: 次に見ておきたい動き

  • バンコクで9月27日、東南アジア初のサンリオキャラクターズ・ハーフマラソン: One Bangkokで開催され、主催者は3万人超の参加を見込むとしていました。参加者は6キャラクターのチームから選ぶ形式で、チケットは1,690〜2,950バーツ(いずれも2026年7月3日時点の報道、The Nation Thailand)。当日の実績が出れば、タイでのサンリオ需要の規模が測れる数字になります。
  • 9.9の各国実績: 各プラットフォームによる2026年9.9の実績値は、本稿執筆時点でいずれの国でも公表を確認できていません。

今週の出来事の網羅は週刊ダイジェスト2026年9月14日号にまとめています。