今週は、同じキャラクターIPが映画館・水族館・カルーセルと場所を変えながら人を集めている週でした。先週扱った『映画ちいかわ』は日本で興収100億円を超え、8月28日にインドネシアで公開されます。あわせて、TikTok Shopの週次ランキングを1本開いてみたところ、そのまま使える数字と使えない数字が同居していたので、その見分け方も書いておきます。
『映画ちいかわ』が公開から約1か月で100億円、次はインドネシア
日本側の数字が動きました。8月23日に映画公式Xが興行収入100億円突破を発表しています(モデルプレス、8月23日)。先週の本稿で触れた「8月16日までの24日間で92.8億円・645万人」から、1週間で大台に乗った形です。
興行通信社集計の8月21〜23日の週末成績は、動員82万5800人・興収12億4200万円で1位を維持。累計は動員766万人・興収110億円超に達しました(シネマトゥデイ、8月24日)。なお動員は延べ人数なので、先週書いたとおり複数回鑑賞を促す入場者特典の設計がそのまま数字に乗っています。
東南アジアの2陣目はインドネシアです。公開日は8月28日、配給はCBI Pictures(Anime News Network、8月5日)。上映を告知したチェーンについては、8月4日時点でCGV Cinemas IndonesiaとCinepolis Indonesiaの2社がSNSで告知したとThe Indonesian Anime Times(同日)が伝えています。先週報告したシンガポール・マレーシアの8月20日公開から8日遅れです。インドネシアで特典バンドルが組まれているかどうかは、今週時点で内容を確認できていません(CGV公式サイトは自動アクセスを遮断しており、記載を読めませんでした)。タイ・フィリピン・ベトナムについては、今週も公式の公開日を確認できていません。
同じIPが、香港では別の形で走っています。Campaign Asiaが8月24日にまとめた「いまアジアのモールで走っている大型アクティベーション8件」の1つがChiikawa Artiverse。クリエイティブ企業AllRightsReservedがManulifeを冠スポンサー(principal sponsor)に迎えて、K11 MUSEAと尖沙咀のハーバーフロントの2会場に持ち込んだ展示です。4つのテーマゾーンで構成され、世界初という「Chiikawa-Go-Round」カルーセルと、ナガノ氏の原画130点超が並びます(Campaign Asia)。K11 MUSEAの公式イベントページによると、会期は8月1日〜9月6日。屋内会場はK11 MUSEA 6階のK11 Art & Cultural Centre Kunsthalleで、屋外の「Chiikawa-Go-Round」は地上階(香港表記の「地下」)にある海沿いのプロムナードです。公式は両方を「2つの有料展示区」と書いており、屋外のカルーセルも入場券が要ります(カルーセル11:30〜22:00、屋内展示10:00〜22:00)。6階には物販ストア(10:30〜22:00)が併設。チケットはKLOOK販売、主催はAllRightsReserved、ライセンス協力はSpiralcute Internationalです。
劇場公開と、チケット制の大型展示+物販が、別々の場所で並行して走っているのが今のちいかわの形です。
キャラクターグッズは権利物なので、正規流通品の取り扱い可否を仕入れルートごとに確認する必要がある点は先週と変わりません。
Pop MartのCRYBABYが水族館の中で、8月30日まで — 観光局が名前を出している
Pop Martのシンガポール企画が今週末で終わります。**「CRYBABY Cry Me an Ocean」**は、POP MART・Resorts World Sentosa(RWS)・シンガポール政府観光局(STB)の3者による企画で、期間は6月24日〜8月30日、会場はセントーサ島のSingapore Oceanariumです(STB公式リリース、6月10日)。
リリースは「本物の水族館の中で行う初の企画」と説明しており、構成を分解すると動線がはっきりしています。フォトゾーンは屋外の空気像2体を含めて全体で11か所です。
- 屋外(無料): 高さ5mの空気像2体、THE ANGLERFISH と THE PUFFERFISH が入口で出迎える
- 館内(要入場券): 2mの立像 THE WHALESHARK が屋内動線の起点。Ocean Wonders、Shark Seasのトンネル、Open Oceanの観覧パネルまで、水槽沿いに等身大の立像とフォトスポットが置かれる
- 物販(別棟): RWSの商業区画WEAVEにCRYBABYのポップアップストア。当日の水族館チケット提示+S$128以上の購入で限定アイマスクを進呈(数量限定)
STBのJohn Conceicao氏(Executive Director, Marketing Partnerships, Planning & Capability Development)は「シンガポールのアトラクションが、シンガポールならではの予想外の形でグローバルIPの体験を立ち上げられることを示す事例」とコメント。POP MART側はNok Siriporn氏(Head of Southeast Asia)が「シンガポールは依然として重要な市場」と述べています。観光局が名前を出す規模の企画に、ブラインドボックス発のIPが使われています。
CRYBABYの出自も押さえておくと読みやすくなります。作者はタイ人アーティストのMolly(Nisa Srikhamdee)で、Pop Martと契約している唯一のタイ人アーティスト。亡くなった愛犬「Somchun」から着想したキャラクターだと、4月26日付のThairath英語版が本人インタビューで伝えています。Pop Martの2026年上半期決算(8月20日)では、CRYBABYの売上は16.3億元で、THE MONSTERS(44.5億元)、TWINKLE TWINKLE(26.5億元)に次ぐ3番手です。
IPそのものは真似できませんが、無料の入口 → 有料の滞在 → 別棟の物販 → 購入額のしきい値という四段構えは、実店舗を持たなくてもLP・商品ページ・バンドル価格の設計に置き換えて読めます。
TikTok Shopタイの週間首位は味の素 — ただし同じ表のインドネシアの推計額は成立しない
分析ツールEchoTikが8月13日に公開した週次レポート(集計対象は8月3〜9日)を開きました。同社は表の上に「GMVは推計値」と明記しています(EchoTik)。東南アジア3市場の首位はこうなっています。
| 市場 | 首位ショップ(カテゴリ) | 推計週間GMV | 単品首位 | | --- | --- | --- | --- | | タイ | Ajinomoto Thailand(食品・飲料) | 940万〜1150万ドル | aminoVITALのエナジーゼリー(930万〜1140万ドル) | | マレーシア | ANAS(美容・パーソナルケア) | 1370万〜1680万ドル | リップ6本セット(1360万〜1670万ドル) | | インドネシア | Zwitsal(ベビー・マタニティ) | 2億8490万〜3億4820万ドル | ベビーギフトボックス(2億1520万〜2億6300万ドル) |
タイの首位が美容ではなく食品で、しかも日本ブランドだったのは目を引きます。aminoVITALはタイのアジノモト現地法人が正規に扱っており、公式サイトにはゼリーショット、ブルーパウチ、Red-shot、water chargeなどのラインが並んでいます。
ただしインドネシアの推計額は、そのままでは使えません。Ed Sander氏がMomentum Worksの集計として伝えるところでは、TikTok Shopの2026年上半期GMVは東南アジアで347億ドル、前年同期の192億ドルから80%増です(China Digital Retail Report、8月19日。なおMomentum Works自身が公開している数字は全世界で503億ドル・前年同期比92%増(8月6日)で、うち米国が118億ドル。東南アジアの347億ドルは全体の約7割にあたります)。
347億ドルを上半期26週で割ると、東南アジア全体の週あたりGMVは約13.3億ドルです。インドネシアの1ショップが週2億8490万〜3億4820万ドルなら、東南アジア全域の21〜26%を1店舗が占めることになります。単品のギフトボックスだけで16〜20%、2位のDaily Care by Unilever(週1億310万〜1億2600万ドル)を足すと2店舗で29〜36%。1国の1店舗の数字としては受け取れません。一方タイの940万〜1150万ドルは東南アジア週間の1%未満で、規模としては説明がつきます。
つまりこのレポートは、順位は参考にできるが、絶対額は市場ごとに検証してから使うものです。分析ツールの数字を社内資料や仕入れ判断に貼る前に、その市場の総GMVで一度割ってみる。今回のように説明のつかない数字は、この一手間で気づけることがあります。
順位だけを取り出すと、マレーシアは6本セットのリップ、インドネシアはベビー用品のギフトボックスで、どちらも中身が一目で分かる複数点まとめ売りです。タイの首位は単品のエナジーゼリーで、こちらは用途がはっきりした機能性食品。同じ週でも、上位に来る商品の型は市場ごとに違います。
短信: 次に見ておきたい動き
- 化粧品の規制が5月に3か国で同時に動いていた: ChemLinkedの月次まとめ(6月5日公開、対象は5月)によると、フィリピンFDAは5月4日にASEAN化粧品指令の付属書を改訂し、禁止成分を30件追加・4件改訂、制限成分を3件追加・2件改訂、UVフィルターを1件改訂・1件削除。タイは5月21日に官報3本でマイクロニードル化粧品の製造・輸入・販売を原則禁止(限定的な例外あり、5月22日施行)。ベトナムは5月29日に化粧品管理に関する政令案をWTOに通報し、2026年12月31日施行の見込みとしています(ChemLinked)。化粧品を東南アジアに出している場合、成分表と各国の届出内容が今も一致しているかは確認どころです。
- 菓子はビスケットが基礎、タイだけ塩味: NielsenIQが7月31日に公開した消費者パネル分析(2026年3月までの12か月)によると、ビスケット・塩味スナック・チョコレートが東南アジアと香港の主要カテゴリで、多くの市場ではビスケットが首位。タイだけは塩味スナックの選好が強いとしています。買い方も分かれており、フィリピンとインドネシアは来店回数を減らして1回あたりの支出を増やす一方、タイは来店回数を増やして1回の買い物を小さくしています(NielsenIQ)。
- MINISO×サンリオは10月まで: 先週扱ったポップアップは、シンガポール・タイ・ベトナム・インドネシア・マレーシアの7会場を8月から10月にかけて回ります(Time Out Singapore、8月21日)。会場と商品構成は先週のトレンドウォッチにまとめています。
来週は9.9の直前週です。プラットフォーム側の掲示内容と各国の日程は週刊ダイジェスト8月24日号で追っています。
