9.9まで2週間です。今週は、東南アジアで「何が買われているか」と「どこで見つけられているか」の両方に、数字のついた材料が出ました。Pop Martの上半期決算はIPの勢力図が入れ替わったことを示し、東南アジア6カ国の消費者調査は生成AIが発見経路の4分の1に入ってきたことを示しています。順に見ていきます。
Pop Martの上半期: 主力IPが1本から2本になり、形態はぬいぐるみに寄った
Pop Martが8月20日に2026年上半期の決算を発表しました。売上は171.7億元で前年同期比23.8%増、調整後純利益は51.6億元(調整後純利益率30%)、粗利率は69.7%です。
地域別では中華圏が122億元・前年比47.3%増で店舗455、アジア太平洋(中国を除く)が25.8億元で店舗90、米州が18.9億元で店舗86、欧州その他が5.1億元で店舗45。世界の店舗数は676、ロボショップ(自販機型店舗)は2,827台です。東南アジアの単独数値は開示されていないため、この地域の伸びはアジア太平洋の枠でしか読めません。
セラーとして目を引くのはIP別の内訳です。売上10億元を超えたIPは6つあり、LABUBUを含むTHE MONSTERSが44.5億元で全体の26%。次点がTWINKLE TWINKLEの26.5億元で、前年比580.6%増という桁の違う伸び方をしています。以下CRYBABY 16.3億元、DIMOO 16.2億元、SKULLPANDA 15.5億元、HIRONO 10.1億元。カテゴリ別ではぬいぐるみが98.2億元・前年比60%増と、全社の伸び(23.8%)を大きく上回りました。
数字から読めることは2つです。ひとつは、THE MONSTERS一本足だった構図が崩れ、後続IPが独立した柱に育ったこと。もうひとつは、フィギュアより「抱ける・持ち歩ける」ぬいぐるみ形態のほうが速く伸びていることです。一方で伸びの角度は変わっています。同社が5月12日の第1四半期の業績アップデートで示した全社売上の伸びは前年同期比75〜80%増でした(The Standard)。単独四半期の75〜80%増と上半期累計の23.8%増を並べると、第2四半期は大きく減速した計算になります。
同じIP需要の文脈で、MINISOがインドネシア初の旗艦業態「MINISO Friends」を8月15日にSummarecon Mall Bekasiで開いています(Retail Asia)。1,500㎡で、品揃えの約60%が独占・先行発売・限定のIPコレクション。One Piece 3.0、Persona、Sanrio Racingのブラインドボックスなどを並べ、1階をブラインドボックスとぬいぐるみ、地下1階を生活雑貨に振り分けています。MINISOのサンリオ展開については先週のトレンドウォッチで扱いました。
ファンダム全般については、Inside Retail Asiaが8月24日の署名コラムでAmazon AdsとTwitch Adsが12カ国(日本・韓国・米国・英国・豪州・ブラジル・メキシコ等)で実施した調査を引いています。ファンの70%が「ファンダムは日常の一部」、64%が「アイデンティティの一部」と答え、64%がデジタルサービスで関連商品を発見・購入している。一方で54%が「ブランドの参加が本物かどうかは見分けられる」とも答えています。
発見経路に生成AIが入ってきたが、買う理由の上位は割引ではない
impact.com・Cube・電通が東南アジア6カ国の消費者2,400人を対象にした年次調査「E-commerce Influencer and Affiliate Marketing in Southeast Asia 2026」(第4版)を7月31日に公表し、今週Retail Asiaが取り上げました(プレスリリース全文 / Retail Asiaの記事)。
発見経路は、マーケットプレイスが71%で依然として首位、検索エンジンが57%、生成AI(ChatGPT・Gemini・Claude等)が24%。生成AIの利用率は国差が大きく、ベトナム34%、インドネシア31%に対してシンガポールは14%です。商品リサーチ段階では生成AIの利用が28%に上がります。
購買の決め手はまだ人でした。影響度は4点満点で家族・友人が2.42、オンラインレビューが2.36、クリエイターが1.98。67%が「クリエイターが薦めたから買った」と答えています。アフィリエイト経由の購入理由は、信頼と裏取りが49%で最多、実用性・利便性が28%と続き、割引や販促は上位に来ていません。
動線として実務的なのは次の数字です。インフルエンサー経由で買った人のうち、56%が動画内の商品タグ、43%が説明欄やコメントのリンク、41%がストーリーズから入っています。SNS別のエンゲージメントはYouTubeが23%で最も高く、TikTok 17%、Facebook 15%が続きます。市場規模は2026年に2,190億ドル(前年比約15%増)、2031年に約4,100億ドルの見通しで、インドネシアとタイの2カ国で58%、マーケットプレイスの平均シェアは72%。インフルエンサー・アフィリエイト起因は売上の32%、約700億ドル相当と推計されています。
ライブコマースについては、シンガポールの実態をVulcan Postが8月18日にまとめています。2023年時点で東南アジアではライブ視聴者の63%が購入に至ったのに対し、シンガポールは40%。TikTok Shopシンガポールのライブ経由GMVは2025年4月時点で前年比85%増でしたが、実際の配信は数十人の視聴者がバウチャー待ちで滞留するケースが多いとしています。うまくいっている3社(Tasty Toastys、Tap Space、Emporal Co.)に共通するのは、配信自体が見て楽しい設計になっていること、毎日続けていること、作り手が顔を出していることの3点でした。
美容の訴求語が「抗老化」から「skinspan」へ
Mintelの「APAC Beauty and Personal Care Landscape 2026」が、スキンケアの訴求軸が従来のアンチエイジングから長期的な肌の健康(skinspan)へ移っていると指摘しています(Retail Asia)。タイではZ世代の72%が「肌の将来の見た目のために先手を打つことが非常に重要」と答え、女性Z世代の63%が「化粧品より美容医療系トリートメントに多く払う価値がある」と答えています。臨床的な裏づけ、測定可能な効果、内服(インナーケア)との併用が評価軸になりつつある、というのがMintelの整理です。
日本商品側の実売でも「守る・防ぐ」の言葉が通っています。Shopee Japanの8月号「人気急上昇商品」(8月11日公開、売上額基準)では、ベトナムで資生堂のIHADA フェイスプロテクトパウダー9gが挙がり、花粉や紫外線などの微粒子から肌を守る機能性が評価されたと説明されています。フィリピンではカテゴリ別(ビューティー)の上位にサンベアーズのストロング スーパー クールプラス(SPF50+ PA++++)が挙がり、年間を通じた強い日差しに対するUVカット効果と耐水性が理由とされています。ブラジルでは小林製薬のブレスケアが売上首位でした。Mintelの整理と実売の並びは、どちらも「守る・防ぐ・続ける」側の語彙に寄っています。9.9の商品説明文を書くときの材料になります。
セールカレンダー: 9.9まで2週間、ベトナムは9月25日が中秋節
Shopeeシンガポールの2026年版9.9公式キャンペーンページは稼働済みで、本稿執筆時点で確認できる内容は「$450以上で$99引きのフラッシュバウチャー」「$9・$99・$699のShocking Deals(最大90%オフ)」「他社が安ければ差額の120%を返金する最低価格保証」「翌日配送保証」です。ただしページ上に開催期間の記載はなく、日程を明記した公式発表は各国とも確認できていません。当社のセールカレンダーでは引き続き9月9日をピークとして扱っています(DiveDeals)が、この日付を裏づける独立した2件目の出典は今回も取れていません。
ベトナムの中秋節は今年9月25日です。月餅市場は昨年より2週間ほど早く動き出したと7月22日時点でTuoi Treが報じており、Kinh Doは80種類超のラインナップを7月末に投入、Shopee・Lazada・TikTok Shopでも販売しています。塩漬け卵入りのスノースキン月餅は1個15万〜20万ドン(約5.7〜7.6ドル)で、SNSで話題になった商品として前掲のTuoi Tre記事が挙げています。贈答需要が中心の時期なので、ギフト包装の可否と配送リードタイムが確認どころです。
ベトナム市場全体の規模感も押さえておきます。EC分析ツールMetric.vn(各プラットフォームの公開データを集計した流通総額ベースの推計で、企業の会計上の売上とは定義が異なります)の上半期レポート(CafeBiz、7月27日)によれば、Shopee・TikTok Shop・Lazada・Tikiの4サイト合計の上半期は291.6兆ドンで前年同期比44.11%増。第3四半期は146.3兆ドン(前四半期比2.31%増)、数量10億点超(同3.45%増)の見通しです。カテゴリ別の上半期は美容が約49.5兆ドン、レディースファッションが約40.4兆ドン、ホーム・生活が約37.7兆ドン。伸び率では食品・日用品が60.96%増で最も高く、ノートPC・オフィス機器が59.75%増と続きます。なお、Mallショップは店舗数ではShopee・Lazada・TikTok Shopの3サイト合計の2.79%にすぎませんが、売上の34.2%を占めています。単価の動きも出ており、メンズファッションは売上が49.65%増える一方で数量は21.43%減、ファッション小物は売上56.95%増に対し数量3.15%減と、1点あたりの単価が上がる方向に振れています。
短信
- ShopeePayが中国のWeixin Pay加盟店で使えるように: ShopeePayとテンセントの越境決済プラットフォームTenPay Globalが8月20日に発表。シンガポールとタイのShopeePay利用者が、中国国内のWeixin Pay QRコード加盟店で自分のアプリのまま支払えるようになりました。マレーシア・ベトナム・フィリピンには順次拡大予定です(Singapore Business Review)。
- フィリピンでSPX向け倉庫が4万㎡増: SM Prime傘下のSM Warehousesが、パシグ市の4万㎡の物流施設をShopeeのパートナーであるSPX ExpressとScommerce Philippinesに引き渡しました。ラグナのSilangan(約8.6万㎡の長期リース)と合わせ、Shopee物流向けの提供面積は12.6万㎡超に。パシグは都市型のディストリビューションハブとして、メトロマニラのラストマイル短縮に充てられます(Retail Asia)。
- シンガポールのJapan Homeがフランチャイズ移管: Japan Homeを保有するIH Retailが、Valu$やABCを運営するRadha Export社と8月13日に3年のフランチャイズ契約を締結。8月19日に既存店舗を引き渡し、8月20日に全店が営業を再開しました。現地では6〜7月に5店舗の閉店セールが告知され、8月18日時点でも複数店が閉鎖・棚卸し中だったとVulcan Postが報じています。「日本」を冠した安売り雑貨チェーンの棚が入れ替わる動きで、同カテゴリに卸している場合は取引条件の確認どころです。
- Sheinが香港IPOの価格レンジを提示、9月1日上場予定: クラスB株約2.8億株を1株HK$47.60〜49.50で売り出し、最大138.6億香港ドル(約17.7億ドル)を調達する計画。レンジ上限での評価額は約270億ドルで、2023年の640億ドルから大きく下がっています。中国証券監督管理委員会からの香港上場承認は7月初旬に取得済みで、価格決定は8月31日、取引開始は9月1日の予定です(CNBC)。
