ベトナムはいま、東南アジアで最もプラットフォームの勢力図が動いている市場です。「ベトナム=Shopee」という数年前の常識が塗り替わりつつあるので、シェア・カテゴリ・決済の3点を最新データで整理します。
4プラットフォームの現在地
Vietnam Briefingがまとめた2025年1〜9月の集計によると、主要4プラットフォーム(Shopee・TikTok Shop・Lazada・Tiki)の合計売上は116.2億米ドルで前年同期比34.4%増でした(Vietnam Briefing)。2025年第3四半期時点の勢力図はこうです。
- Shopee: シェア56%で首位。ただし売上成長は前年比4%と鈍化
- TikTok Shop: シェア41%まで伸長。売上成長は前年比69%
- Lazada: シェア3%
- Tiki: 売上8割減と苦戦
首位のShopeeがほぼ横ばいで、TikTok Shopが市場全体の成長をほぼ一手に取り込んでいる構図です。2025年上半期の時点でも「TikTok ShopのGMVが前年比148%増でシェア約42%」という数字が出ており、傾向は年間を通じて一貫しています。二強寡占が固まる一方で、その二強の中身が入れ替わりつつある、というのが現在地です。
市場そのものはまだ伸びる
ベトナムのEC市場は東南アジアで3番目の規模です。2024年の市場規模は約240億米ドルで、2027年には440億米ドル(年平均成長率23%)に達するという予測があります(Payments CMI)。2025年についても商工省は260〜280億米ドル(前年比25.5%成長)を見込んでおり、第3四半期のGMVは前年比22.3%増の39.4億米ドル、主要4プラットフォームでの消費額は月平均約12.9億米ドル(前年の約10億米ドルから増加)でした(Vietnam Briefing)。プラットフォーム間の競争は激しくても、パイ自体が毎年2割以上増えている市場です。
TikTok Shopの伸びは地域全体の潮流
ベトナム単体の現象ではありません。Digital in Asiaの分析では、TikTok Shopの東南アジアGMVは2022年の44億ドルから2025年には456億ドルへと3年で約10倍になっており、ベトナムは70〜80億ドル(前年比+150%)と域内で最も高い成長率を記録しています(Digital in Asia)。
買われ方の違いも重要です。同分析によるとTikTok Shopの平均注文単価は4.5〜6ドルで、Shopeeの13〜15ドルの半分以下。動画をきっかけにした低単価・高頻度の衝動買いが中心で、購買転換率は従来型ECの1.7倍とされます。「検索して比較して買う」Shopeeと、「動画で見て衝動的に買う」TikTok Shopは、同じECでも別の買い物体験です。
何が買われているか——食品・コスメ・ファッション
購入頻度ベースのカテゴリランキングでは、パッケージ食品・飲料が最上位で、コスメ、生鮮・即席食品、ファッション&スポーツ、ホームケア用品が続きます(Payments CMI)。高頻度で買われる消費財が上位を占める、生活密着型の市場です。
越境の輸出側から見た伸びしろとしては、家具、アパレル、ホーム&キッチン、パーソナルケアが成長分野として挙げられています(Vietnam Briefing)。
日本商品もこの文脈で動いています。Shopee Japanの最新月次データ(6月号)では、ベトナムの人気急上昇商品として資生堂「IHADA フェイスプロテクトパウダー」が挙がっており、UVカットと低刺激を両立したスキンケアという「機能で選ばれる日本コスメ」の型がここでも確認できます(Shopee Japan)。
決済はいまも「代引き67%」
意外に思われがちな点として、ベトナムのEC決済は**いまも代金引換(COD)が取引量の67%**を占めます。デジタルウォレットは18%、クレジットカードは8%にとどまります(Payments CMI)。現金文化とECの信頼形成が途上であることの表れで、受け取り時の支払い拒否といったCOD特有のリスクが構造的に存在する市場です。越境販売ではプラットフォーム側の決済・配送スキームに乗ることになるため、自分の販売条件でCODがどう扱われるかは事前に確認しておきたいポイントです。
制度と物流: これから変わる部分
制度面では、越境取引・プラットフォーム責任・消費者保護をカバーする新しいEC法の制定が進行中です(2013年の政令52号を置き換えるもの)(Vietnam Briefing)。越境セラーに関わるルールが今後数年で更新されていく前提で見ておくべき市場です。
物流は成長のボトルネックとして残っています。同レポートによると、都市部の当日配送やフルフィルメントは成熟してきた一方、地方のラストマイルやコールドチェーンは未整備。さらに2025年導入の道路安全規制(運転手の休憩義務等)で、物流事業者のコストが最大2割増になったという報告もあります。配送品質とコストの地域差が大きい市場だという点は、価格設定や配送期待値の設計に効いてきます。
買い手の7割はZ世代・ミレニアル
ベトナムのオンライン購入者の**72.5%はZ世代(27歳未満)とミレニアル世代(28〜44歳)**で、62.8%が週1回以上オンラインで買い物をしています(Vietnam Briefing)。動画起点の消費と若年層比率の高さがTikTok Shopの伸びを支えており、この人口構成が変わらない以上、流れが逆回転する材料は見当たりません。
セラーにとっての意味
ベトナム向けの販売を考えるなら、Shopee単独ではなくTikTok Shopを含めた販路設計が前提になりつつあります。特に単価が低め(数ドル帯)の日用品・コスメ・雑貨はTikTok Shopの主戦場と重なるため、商材がこの帯に入るセラーほど影響が大きくなります。一方で、単価が高めの商材や検索起点で買われる商材は、引き続きShopeeの検索面が主戦場です。自分の商材が「検索されて買われる」のか「見かけて買われる」のか——その買われ方で優先順位を判断するのが現実的です。
今週の東南アジア全体の動きは週刊ダイジェスト2026年7月14日号にまとめています。
