東南アジアで「今なにが動いているか」を毎週定点観測するトレンドウォッチ、第1回です。今週は、アジア全域に広がるベイブレードXの品薄、Shopee公式データにみる日本商品の売れ筋、フィリピンのTikTok Shop実売ランキング、そして終わったばかりの7.7セールを取り上げます。

ベイブレードX、「大人の独楽」ブームで品薄——公式が異例の供給おわび

タカラトミーの現行シリーズ「ベイブレードX」が、アジア各地で買えないほど売れています。90年代後半〜2000年代に子どもだった世代が大人になって戻ってきた再ブームで、香港・日本・タイ・台湾・シンガポールなどに広がり、タトゥーショップや公園、モールの即席アリーナで対戦会が開かれるほど。香港では28歳の愛好家が約400ドルをコレクションに投じた例が紹介され、公式スタジアムが手に入らず中華鍋で代用するプレイヤーまでいるといいます。台湾や香港では玩具店に行列ができ、レアモデルの二次流通価格は定価の10倍近い例も報じられています(Dexerto)。

現行の「X」世代がヒットしている理由のひとつは競技性です。機体のギアがスタジアムのレールを噛んで一気に加速する新機構で対戦のスピードと衝突の激しさが増し、懐かしさで戻ってきた大人たちの遊びが草の根の競技シーンへと変わってきています。2025年10月には東京タワーで大人も参加できるオープンクラスの世界大会が開かれており、興行としての土台もすでにあります(Dexerto)。

供給が追いつかず、タカラトミーは5月20日に「需要が想定を大幅に上回った」として品切れを詫び、国内外向けの増産を表明する告知を出しました。それでも6月時点で標準ブースター(定価約1,200円)が3,000円近くで転売され、人気機体の「Hover Wyvern」は2025年11月に70〜80カナダドル程度だったものが200〜417米ドルに高騰。競技勢が個体差(金型・重量)を求めて同じ機体を10〜20個買う動きが品薄に拍車をかけ、マレーシアでは転売過熱を受けて大会で2機種が使用禁止になったとも報じられています(Nerdbeak)。

セラー視点: 本体は品薄と転売規制の境界が悩ましい一方、ブームの中心が「対戦する大人」である点は見逃せません。12月12〜13日にはバンコクのICONSIAMで世界大会「Beyblade X GP Final 2026」が開催予定で(Dexerto)、タイを中心に需要はまだ続く前提の動きです。スタジアム・ケース・パーツ類などの周辺アイテム、正規ルートで仕入れられる型番の見極めが現実的な入り口になります。

Shopee売れ筋にみる日本商品の現在地——工具・目元ケア・レトロゲーム機

Shopee Japanが7月10日に公開した月次の売れ筋データでは、「日本商品らしさ」の広がり方が面白い月でした(Shopee Japan)。

  • ベトナム: ベッセルの電動ドライバー「電ドラボールプラスII」(USB Type-C充電式)が売上上位。コスメでも食品でもなく工具が日本ブランドの機能性で選ばれています
  • マレーシア: 目元用ケアクリームが売上上位で、売れ筋カテゴリはビューティー。口臭対策用品も動いており、「悩み特化型」の日本製パーソナルケアが強い市場です
  • ブラジル: 任天堂の「ニンテンドーDSi LL」(動作確認済み・タッチペン付属)が上位。売れ筋カテゴリはホビー・コレクションで、映画題材のミニカーセットやコレクターズ製品が並びます

セラー視点: 「日本商品=コスメ・食品」の型から一歩出て、工具・レトロゲーム機のような「日本の品質を信頼して買う耐久財」が国ごとに違う形で上位に来ています。自分の仕入れルートで触れる商材をこの3カテゴリ(実用工具・悩み特化ケア・レトロホビー)に当てはめて見直す価値があります。

フィリピンのTikTok Shop実売: 1商品で週31万注文、低単価アパレルの回転力

分析ツールFindNicheの集計(7月1日時点・直近7日間の注文数ベース)によると、フィリピンのTikTok Shopでは低単価の女性向けアパレルが上位を席巻しています(FindNiche)。

  • 1位: ロングワンピース(Jira) ₱171.62 — 7日間で31.8万注文
  • 2位: スリムフィットTシャツ(UNIFIT) ₱201.00 — 19.3万注文
  • 3位: ミニブロック知育玩具(GiGi Toy) ₱78.50 — 13.7万注文
  • 4位: パッド入りトップス(KILY.PH) ₱136.50 — 13.2万注文
  • 5位: 束タイプつけまつげ(BQI) ₱66.00 — 9.8万注文

上位5商品はすべて₱66〜201(約170〜520円)の価格帯。週30万注文という回転は「動画で見て、その場で買う」フィリピンの消費スピードをよく表しています。

セラー視点: この価格帯・回転勝負の土俵は、日本からの越境出品が正面から戦う場所ではありません。ただ「何が動く市場か」の物差しとしては有用で、低単価×動画映え(Before/After、着用感)という文法はフィリピン向け商品ページやカテゴリ選定にそのまま応用できます。知育ブロックが食い込んでいる点は、玩具カテゴリの底堅さのサインとして覚えておきたいところです。

では日本商品はフィリピンでどこを狙うのか。Shopee Japanが7月11日に公開した市場解説によると、フィリピンのEC利用者は2024年時点で1,428万人、2028年には3,000万人超への拡大が見込まれ、平均年齢は25.2歳と若い市場です。製造業が弱く工業製品の多くを輸入に頼るため、日本製品は「高価格だが品質・耐久性に優れている」と評価されています。フィリピン統計局のデータでは上位20%の高所得層が国内消費の約5割超を占めており、日本商品は中間層以上がターゲット。人気カテゴリは日焼け止めなどのスキンケア、インスタントコーヒーなどの日常食品、ポケモンカードといったアニメ・エンタメ関連です(Shopee Japan)。低単価アパレルの奔流とは別レーンに、「品質で選ぶ上位層」という日本商品の定席がある、と整理できます。

7.7セール終了——次の山は9.9

7月7日前後のミッドイヤーセールが各国で終了しました。シンガポールではShopeeが建国60周年に合わせた「7.7 Celebration Sale (SG60エディション)」を7月6日20時から11日まで124時間展開し、S$400以上でS$77オフのフラッシュバウチャーを配布。LazadaはSuper Savers Saleでストア・プラットフォーム・送料の3種バウチャーの重ねがけを推し、Qoo10はカートクーポン2枚の併用(他社は原則1枚)を武器に日韓輸入品とK-ビューティーで存在感を見せました。Zaloraはファッション・ビューティー最大70%オフ、チャンギ空港のiShopChangiはワイン・スピリッツのプロモを6月24日〜7月31日のロングランで実施と、プラットフォームごとに設計の違いが出た月です(MissLobang)。

Shopeeは例年15日・25日前後にも月中バウチャーを配布するパターンがあり、7.7後も月末までセール機会が続く見込みです。ダブルデーの次の大きな山は9.9(Amazonのプライムデーは6月23〜26日で終了、次回のPrime Big Deal Daysは例年10月頃)。7.7で動いたカテゴリと在庫の消化状況を今のうちに棚卸しして、8月中に9.9向けの在庫・価格計画を組むのが定石です。


今週の東南アジア全体のニュースは週刊ダイジェスト2026年7月14日号にまとめています。ベトナムのEC勢力図や抹茶ブームの深掘りもそちらからどうぞ。