9.9まで8日です。ただ今週いちばん情報量が多かったのは、キャンペーンの告知ではなく「実際に何がどこで売れているか」の集計のほうです。8月28日にベトナムのEC分析事業者Metricが、保湿スキンケアと乳幼児用粉ミルクという2つのカテゴリのレポートを同日に出しました。この2本を並べると、同じベトナムのECでもカテゴリによって主戦場のプラットフォームが正反対に分かれていることが見えます。あわせてタイの需要の冷え方と、9.9の日程で出回っている情報の年次ズレを整理します。

ベトナムの保湿スキンケア: TikTok Shopがシェアで逆転、売り場は「公式ストア」に寄った

Metricの集計によると、2026年1〜7月のベトナムECにおける保湿カテゴリのGMVは4兆8,730億ドン、前年同期比34%増でした。シェアはTikTok Shopが52.9%(前年同期比53.3%増)、Shopeeが46.3%(同20.1%増)。Metricが同日に出したもう1本のレポートでは集計対象をShopee・Lazada・Tiki・TikTok Shopの4サイトと明記しており、いずれもプラットフォーム自身の公表値ではなく同社の推計である点は割り引いて読む必要があります。そのうえでMetricは、このカテゴリでTikTok Shopが首位を奪ったと報告しています。

売り場の内訳の変化のほうが、出品者にとっては効いてくるかもしれません。公式ストア(Official Store)経由のシェアが前年同期の36.0%から53.4%へ上がり、GMVでは98.5%増。逆に個人・C2C出品はシェアが61.9%から44.3%へ落ち、GMVも4.3%減っています。1年で「誰から買うか」の重心が公式側に移動した計算になります。

中身も分かれています。ダーマ(薬用・調剤系)コスメは金額シェアこそ14.7%(非ダーマの一般化粧品が85.3%・31%増)ですが55%増と全体より速く、しかもプラットフォーム間で偏りがあります。Shopeeでは保湿カテゴリGMVの22.3%がダーマなのに対し、TikTok Shopでは7.9%。説明を要する商材はShopee、動画で見せて即決させる商材はTikTok Shop、という棲み分けが数字に出ています。訴求ニーズ別では、シミ・美白/エイジングケア(48.2%増)/日常保湿/肌荒れ補修(46.6%増)/ニキビ予防の5つで市場GMVの約96%を占めました。なお上位5ブランドはOlay、La Roche-Posay、L'Oréal、Obagi Medical、Thorakaoで、日本ブランドは入っていません。

同じベトナムでも、粉ミルクはShopeeに寄る

同じ日に出た粉ミルク・ベビーフードのレポートは、Shopee・Lazada・Tiki・TikTok Shopの4サイト合計で上半期の売上4兆900億ドン・48%増、数量は980万個・24%増でした。金額の伸びが数量の伸びの2倍という形で、1点あたりの単価が上がっています。

プラットフォーム別ではShopeeが65%(前年同期62%)で、カテゴリの成長分の71%をShopeeが生んでいます。TikTok Shopは22%(同16%)で伸び率は101%増と最も速いものの、絶対量ではまだ届いていません。伸び率上位はBellamy's Organic(501%増)、HiPP(330%増)、ColosBaby(235%増)、Vinamilk(167%増)、VitaDairy(124%増)。VinamilkとHiPPについては、増加分の79〜83%をShopeeが占めたとレポートは書いています。Metricはこの偏りを、比較検討と真贋確認を重視する保護者の購買行動が、衝動買い型の動画コマースと噛み合わないためと説明しています。

保湿と粉ミルクで結論が逆になっている、というのが今週の要点です。同じ国の同じ期間でも、「試して失敗しても痛くない商材」と「間違えたくない商材」でチャネルが分かれます。日本商材をベトナムに出す場合、チャネルを先に決めてからカテゴリを探すより、カテゴリごとに主戦場を確認する順序のほうが、この2本の数字とは整合します。

タイ: 来店頻度はほぼ横ばい。落ちたのは1回あたりの金額の指数

タイの小売景況感指数(Retail Sentiment Index)は7月に46.6となり、6月の51.5から4.9ポイント下落しました(The Nation Thailand、Thansettakijの報道より)。RSIはタイ小売業協会(TRA)がタイ中央銀行と共同で作成している景況感指数で、実額ではなく50を中立とする指数です(同紙の別記事)。内訳では買い物頻度の指数が47.7で0.4ポイント減にとどまった一方、1回あたり支出額の指数は55.1から47.0へ8.1ポイント落ちています。店には同じくらい来ているが、カゴの中身を減らしている、という形です。同店売上の見通しを表す指数も52.6から46.2へ6.4ポイント下がりました。業態別では百貨店・飲食・ライフスタイル系が40〜46ポイントと、回復傾向にはあるものの中立の50を下回ったままです。7月は政府の共同負担型の消費刺激策(Thais Help Thais Plus、60/40方式)による支出総額が約430億バーツで6月並みを保ち、2,578万〜2,600万人が利用、1人あたりの平均は1,600〜1,700バーツ程度で主に生活必需品に向かいました。それでも指数は下がっています。同記事は第3四半期のRSIを47〜50のレンジと見込んでいます。

消費者側の調査も同じ方向を向いています。Milieu Thailandの調査には2波あります。2026年7月実施の追跡調査では、回答者の77%が直近3か月の生活費を貯蓄の取り崩しか借入でまかなったと答えました。この「追加資金が必要だった層」の内訳を見ると、34%が食費や交通費といった日常支出のために緊急用の貯蓄を取り崩し、29%が後払い(BNPL)、26%がクレジットカード、15%が家族・友人からの借入を使っています(いずれも全回答者に対する比率ではありません)。BNPLの利用率は月収1万バーツ未満では14%、3万〜3万9,999バーツ層では48%と、中間層でむしろ高く出ています(Thai ExaminerThe Bangkok Insight)。守られている支出は食料品(61%)と光熱費(58%)、先に削られたのは旅行(23%)とファッション(18%)でした。

ただし節約一色というわけでもありません。2026年4月実施の本調査では、51%が直近3か月より支出が増えたと答え、75%が価格を最重要の購買要因に挙げ、82%がオンラインチャネルを、78%がキャッシュレス決済を選んでいます。実施波の明示はありませんが、69%は「人生はどうせ不確実なのだから今使って楽しむほうがいい」と考えたうえで購入を決めた経験があるとし、50%は2027年までに家計が改善すると見ています。需要が消えたのではなく、1回に出せる金額の上限が下がったままオンラインに集まっている、という読み方になります。9.9でタイ向けに単価を上げにいく設計は、少なくともこれらの数字とは噛み合いません。

シンガポールとインドネシア: アプリの中の動きは増えている

計測事業者Adjustのレポートでは、シンガポールのEC系アプリのインストールが上半期に前年同期比67%増で、追跡対象市場のなかで最も速い伸びでした。世界全体ではEC系アプリのインストールが2%増、ショッピングアプリのセッションが15%増なので、突出しています。ショッピングアプリのセッション数もシンガポールは58%増で、インドネシアの62%増に次ぐ2位でした(Retail Asia)。

ただしAdjustの地域責任者April Tayson氏は、ユーザー獲得コストが上がり、有料インストールが伸びのうちより大きな割合を占めるようになっていると述べています。インストール初日のリテンションはシンガポールが16%・1.45セッションで、日本の17%・1.51セッションに次ぐ水準。伸びの中身に有料獲得が効いている以上、この数字をそのまま「オーガニックに人が増えている」と読むことはできません。なお引用元の記事に9.9期の広告単価への言及はありません。

セールカレンダー: 9.9の「2026年の日程」を公式に確認できたのは2か国

今週、9.9の日程を検索すると各国のまとめ記事が大量に出てきますが、年次を確認すると古いものが混ざっています。本稿の執筆時点で2026年分として一次ソースを確認できたのは次の2か国です。

  • インドネシア: Shopee公式ニュースルームによると会期は8月25日〜9月9日、ピークは9月9日。ミニゲーム「Voucher Mania」は2フェーズ制で、第1フェーズ(8/25〜31)で獲得したバウチャーは9月1日に、第2フェーズ(9/2〜8)分はピーク当日の9月9日に使う設計です。Rp1,000のSuper Deals、900万点を50〜90%オフ、Super Fashion Day / Shopee Live Day / Super Beauty Day / Super Brand Dayという日替わりのテーマ日を置いています(Shopee Indonesia)。
  • マレーシア: 8月28日付のShopeeマレーシア公式リリースでは会期は9月10日まで。VIP会員向けの先行アクセスが9月6日、9月8〜9日の時間限定枠で配送バウチャー80%オフ、会期を通じてRM9引き(最低購入額なし)の配送バウチャーも配布、ライブ配信は9月9日の12〜14時と21時30分〜23時30分に枠を置いています(Media OutReach)。

一方で、検索上位に出てくるシンガポールの「9月8日20時〜9月14日19時59分」はShopeeシンガポール公式ブログの2025年9月4日付記事に載っている2025年の会期です。フィリピンの「9月1日〜10日」として流通している数字も、たどると2024年のShopeeフィリピンの告知に行き着きます(Manila Standardの2024年8月30日付記事など)。いずれも2026年の日程としては確認できていません。ダブルデーの構造上ピークが9月9日になること自体は変わりませんが、会期の前後端は国ごとに違い、年ごとにも動きます。参加設計はSeller Centreの案内で確認してください。

ベトナムについては、Shopeeベトナム公式ブログが8月26日に更新され、毎月1日の「開幕セール」、15日前後の月中セール、25日前後の給料日セール、そしてゾロ目のダブルデーという月次の型を掲載しています(Shopee Vietnam)。9.9個別の会期の明示はありません。なお9月25日はベトナムの中秋節で、贈答需要の山はここに来ます(出典と経緯はセールカレンダーに整理しています)。

短信

  • マレーシアがEC規制の強化に動く: 通信相のFahmi Fadzil氏が、EC事業者への登録義務を含む規制措置を導入すると表明しました。プラットフォームの閉鎖や制限が目的ではなく、オンラインで売られる商品を既存の基準に適合させることが狙いで、電気・電子製品はSIRIM規格、ハラル表示のある商品はマレーシアのハラル要件への適合が求められます。MCMCには2025年1月1日から2026年8月25日までに詐欺を含むEC関連の苦情が1,964件寄せられ(2025年が1,147件、2026年が8月25日までで817件、うち118件は対応中)、Fahmi氏によれば電気・電子製品に関するものが161件、ハラル表示の有効性に関するものが4件でした(Malay Mail)。規制方針とSIRIM・ハラル要件はRetail Asiaも報じていますが、同記事の電気・電子製品の件数は191件となっており、会見を伝えたMalay Mailの161件とは食い違います。日本から家電・電子小物を出している場合、SIRIMの扱いは事前に確認しておく話です。
  • シンガポールのライブ販売の「地味な実像」: 輸入菓子の量り売りを扱うCandy Cottageは、2022年5月に英・米・独・トルコ産の30種類から自宅でShopeeライブを始め、現在は約500種類・従業員8人体制。ライブは金曜を除く週6日、1回6〜7時間で、TikTok・Shopee・Lazada・自社サイトに分散して同時視聴者は各50〜80人程度です。人気はマンゴーキューブ、サワーライチ、サワーグアバといった現地の棚に並びにくいフレーバーでした。同記事はShopee Seller Education Hubとのタイアップである点は割り引く必要がありますが、バズではなく配信時間の積み上げで回っている構図は参考になります(Vulcan Post)。
  • Miniso上半期: 売上は115億元(22.4%増)、6月末の店舗数は8,674店で前年同期から769店増。純増の約半分が中国本土外でした。玩具・コレクティブルのTop Toyは32.7%増(Inside Retail Asia)。出典に東南アジアの内訳はありませんが、IP雑貨の店舗網が中国本土外で広がり続けている点は、キャラクター商材を扱う出品者には環境要因として押さえておく数字です。
  • Chageeの海外GMVが114.3%増: 第2四半期の純利益は4億6,480万元で、前年同期の7,720万元から大きく伸びました。海外8市場のGMVは114.3%増、一方で中華圏のGMVは9%減。ソウルの3店舗は開業3日で1万6,000杯超を売っています(Inside Retail Asia)。記事は8市場の内訳を示していないため、東南アジア分がどれだけかは分かりません。