東南アジアで「今なにが動いているか」を毎週追うトレンドウォッチ。今週はインドネシアで最速成長カテゴリになった香水と、その上位を独占するローカルブランドの構図を起点に、Pop MartのIP戦略の次の一手(飲食)、Shopee公式データが示す日本商品の売れ筋、そしてインドネシアで8月1日に始まる新しい税徴収の仕組みまでを掘り下げます。

インドネシアの香水熱——ビューティー最速成長、ただし勝っているのはローカル勢

分析ツールMagpie IQが7月24日に公表したインドネシアのフレグランス市場分析によると、EC経由の香水カテゴリは2026年6月時点で月間GMV約2,900万ドル規模、前年比約32%増とビューティー領域で最速の成長を続けています(集計対象はShopee・TikTok Shop・Tokopedia・Lazada・Blibli・Bukalapakの6プラットフォーム、2026年4〜6月のGMVベース)。販路別ではShopeeが約57%を占め、タイプ別ではユニセックス香水が約55%と過半です(Magpie IQ)。

注目すべきは顔ぶれです。データ会社Compasの集計(4つ星以上の商品を対象にしたクロール調査)をDataboksが4月14日に伝えたところでは、2026年第1四半期にShopeeインドネシアで売れた香水ブランド上位10のうち8つがローカルブランドでした。首位Mykonos(シェア5.27%)、以下Octarine、Scarlett、HMNS、Saff & Co.と続き、外国勢はUAE発のAfnanとAhmed Al Maghribiの2つだけです(Databoks)。7月22日のSuara.comの記事も同じCompasデータを引きつつ、Mykonosの価格帯が8万〜40万ルピア超、Octarineは10万ルピア以下で学生や会社員に広がっていると伝えており、「プレミアムな香りを手頃な価格で」という土俵で新旧ローカルブランドが高速に入れ替わる市場になっています(Suara.com)。Magpie IQも上位8ブランドの合計シェアが約29%にとどまる断片化を指摘しています。

セラー視点: 日本発Shopeeの出品対象にインドネシアは含まれないため、この市場に直接参入する話ではありません。むしろ読み取りたいのは「嗜好・気候・価格帯のローカル最適化が効くカテゴリは、ローカルブランドが最速で取る」という構造の見本だということです。香水はその典型で、外資の大手ブランドですら上位に残れていません。日本商品が越境で勝てるのは逆側——現地に代替がない「日本ならでは」のレーンであることを、この数字は裏側から示しています。

Pop Mart、シンガポールに海外初の「IPベーカリー」——キャラは物販から食卓へ

先週のトレンドウォッチで追ったPop Martの次の一手が出ました。Inside Retail Asiaが7月29日に伝えたところによると、同社はシンガポールのユニバーサル・スタジオ・シンガポール向かいに2階建てのベーカリーを開店。黒ごまのLabubuアイスキャンディーやMollyのダブルチーズケーキ、Twinkle Twinkleのココナッツムースなど、キャラクターを模したペイストリーとドリンク45種をS$5〜32で販売します。4月に中国・秦皇島で1号店を出して以来、海外では初の展開で、中国国内では30超のデザートトラック型ポップアップで検証を重ねてきました。タイ・インドネシア・マレーシアへの展開も計画され、欧米も検討中です(Inside Retail Asia)。

背景として同記事は、直近数四半期にわたり売上・利益の前年比の伸びが市場予想を下回り、生産コストが上昇するなかで、Pop Martが「短期のバズを長期の成功に変える」ディズニー型のIP運用へ多角化を進めていることを挙げています。Pop Bakery責任者のZhang Xiaoyang氏は「IPが消費者の生活のあらゆる場面に寄り添うことを目指しており、デザートはその一つ」と語っています。

セラー視点: 先週整理した「キャラで集める行為」の熱が、物販から飲食・体験へ広がり始めた続報です。IPの露出面が増えるほど、周辺の物販需要(正規ライセンスのキャラ雑貨・食品・限定品)も動きます。日本セラーにとってこの構図は、日本IPの正規グッズという勝ちレーンの追い風側ですが、キャラクター商品を扱う場合はライセンスの確認が前提になります。無許諾品はプラットフォームの取り締まり強化が続く領域です。

Shopee公式データが示す日本商品の売れ筋——ベトナムは電動ドライバー、マレーシアはアイケア

Shopee Japanが7月10日に公開した月次コラム「人気急上昇商品」7月号は、直近の販売データから国別の売れ筋を紹介しています。ベトナムではベッセルのUSB Type-C充電式電動ドライバー「電ドラボールプラス【Ⅱ】」が急上昇。日本ブランドの機能性と充電式の実用性が家庭や現場のニーズに合ったと分析されています。マレーシアでは目元用ケアクリーム「ハダリキ クマージック」(20g)が伸び、日常的なスキンケア意識の高まりを反映。ブラジルでは動作確認済みの任天堂「ニンテンドーDSi LL」に注文が集中し、ホビー・コレクション(映画テーマのミニカーセットなど大人の趣味アイテム)が売上額の上位を占めていると紹介されています(Shopee Japan)。

セラー視点: このコラムはShopee自身の販売データに基づく定性的な紹介で、具体的な販売数量は示されていない点は割り引く必要があります。それでも、美容・キャラグッズといった定番に加えて「工具」のような非・定番カテゴリで日本ブランドの機能性が選ばれていること、そしてレトロゲーム機の中古需要が続いていること(先週のトレンドウォッチで整理したShopee Japanコラムでも、日本限定・レトロゲームソフトが売れ筋商材に挙がっていました)は、仕入れの幅を考えるうえで実務的なヒントです。中古ゲーム機を扱う場合は動作確認と状態表記の丁寧さがそのまま評価に直結します。

インドネシア、8月1日からマーケットプレイスが税を源泉徴収——「国内優遇」の制度化も進む

先週「国内優遇・越境線引き」の文脈で整理したインドネシアで、制度側の動きが続いています。国営アンタラ通信によると、税務総局は7月1日にTokopedia・Shopee・Lazada・Blibliの4社を徴収者に指定し、1ヶ月の移行期間を経て8月1日から、マーケットプレイスがセラーの所得税(PPh22、総売上の0.5%、VAT等を除く)を源泉徴収する仕組みが始まります。対象は年間総売上5億ルピア(約2万7,800ドル)超の国内セラーで、税務総局長は「新しい税ではなく、徴収方法が自己申告から変わるだけ」と説明しています(ANTARA)。法的根拠は2025年7月14日施行のPMK-37/2025で、EYの解説によると5億ルピア未満の個人セラーは申告書の提出で徴収を免除されます(EY Indonesia)。

あわせて押さえたいのが、6月8日に施行された新EC規制Permendag 19/2026です。法律事務所Nusantara DFDLの解説によると、越境出品の最低単価100米ドル(FOB)は維持されたうえで、外国セラーには事業ライセンスや規格適合証明、インドネシア語の商品説明などの提出が義務化され、不備があればプラットフォームは登録を拒否しなければなりません。さらにプラットフォームには「検索結果の最初の行に国内商品を優先表示する」ことと国内商品専用の販促ページ設置が義務付けられました(Nusantara DFDL)。

セラー視点: 日本発Shopeeはインドネシア非対応なので直接の影響はありませんが、TikTok Shop等でインドネシアを視野に入れるセラーには、書類要件の増加と検索面での構造的な不利という二重のハードルになります。手数料半減(国内限定)→税徴収の制度化→検索優先表示と、「国内セラー優遇の制度化」が一段ずつ進んでいる流れは、他国への波及も含めて引き続き定点観測します。


今週の東南アジア全体のニュースは週刊ダイジェスト2026年7月27日号(w31)にまとめています。Pop Martのベーカリーがタイ・インドネシア・マレーシアでいつ実際に開くか、そしてインドネシアの8月1日の徴収開始が現場でどう運用されるか——この2点が次に見ておきたい動きです。