8月中旬以降、東南アジアの売り場で動いたのは個別のバズ商品というより、「プラットフォームと小売がどこにお金と棚を置くか」でした。9月2日にセフォラがオリーブヤング監修の韓国コスメをシンガポール・マレーシア・タイで一斉に並べ、マレーシアではTikTok Shopが地元セラー向けの手数料ゼロ枠を積み増し、インドネシアではTokopedia/TikTok Shopが地元商品の半期実績を公表しました。いずれも日本から越境で出しているセラーが直接は受け取れない後押しで、隣に並ぶ商品の条件が変わる話です。

セフォラ×オリーブヤング、9月2日にシンガポール・マレーシア・タイで一斉スタート

セフォラと韓国のCJ OLIVE YOUNGは2026年1月20日に提携を発表しており、その時点の公式リリースでは「2026年秋に米国・カナダ・香港・シンガポール・マレーシア・タイ、2027年に中東・英国・オーストラリア」というロードマップが示されていました(SEPHORA Newsroom 1月20日)。8月4日のリリースで米国が8月20日開始・19ブランドと具体化し、香港・シンガポール・マレーシア・タイは「2026年内」と書かれていました(同 8月4日)。

その東南アジア分が9月2日に始まりました。対象はシンガポール・マレーシア・タイの3市場で、店舗とアプリ・オンラインの両方。オリーブヤングが選定した20ブランド・180点超が入り、ブランド名にはBIOHEAL BOH、S.NATURE、beplain、make p:rem、Cell Fusion C、THE LAB by blanc doux、REJURAN、numbuzin、SUNGBOON EDITORなどが挙がっています(採用ブランドは国によって異なる)。あわせてION Orchard(シンガポール)、Fahrenheit 88(クアラルンプール)、Siam Center(バンコク)の3店舗に期間限定の「K-Beauty Discovery Launchpad」が設置されました(AlvinologyThe Rakyat Post)。マレーシア版の記事はノベルティの条件まで書いており、Fahrenheit 88のLaunchpad限定のTyvekポーチがRM120以上・9月2日〜29日、保冷トートがRM210以上で在庫限り、となっています(同)。なお東南アジア分についてはセフォラ公式サイトにリリースが見当たらず、この2本はいずれも同じリリースをもとにした記事です。

セラー視点: 押さえておきたいのは、これがマーケットプレイス上の値下げ合戦ではなく、「実店舗の棚+公式オンライン」という発見経路を韓国コスメが1日でまとめて手に入れた、という話だという点です。セフォラの1月リリースにあるとおり同社は35カ国3,400拠点を持ち、オリーブヤングは韓国国内に1,390店超を構えます(SEPHORA Newsroom 1月20日)。日本のコスメ・スキンケアをShopeeやTikTok Shopで売っている場合、競合が価格ではなく「どこで見つかるか」の側で強くなる動きです。

もうひとつ、対象国の切り分けにも意味があります。今回入ったのはシンガポール・マレーシア・タイの3つで、ベトナム・フィリピン・インドネシアは今回のリリースに含まれていません。シンガポール・マレーシア・タイはいずれも、Shopee Japanがトップページで対応マーケットとして挙げている国です(Shopee Japan)。日本のコスメ・スキンケアをShopeeで出している場合、韓国ブランドが同じ市場の実店舗側にも並ぶことになります。UVケアや保湿のように韓国ブランドとぶつかるカテゴリを持っているなら、指標を見に行く順番はこの3市場からになります。ただし現時点で確認できるのは棚が置かれたという事実までで、実際にどれだけ売れたかを示すデータはまだ出ていません。

マレーシア: TikTok Shopが「地元セラー」に2026年通年でRM2億5,000万

マレーシアでは、TikTok Shopが8月20日にJomLokal Booster 2.0を発表しました。公式リリースによれば追加投資はRM7,000万で、6月に政府(KPDN、国内取引・生活費省)と組んで打ち出したRM1億8,000万と合わせ、2026年通年で最大RM2億5,000万("up to RM250 million")という組み立てです。内容は手数料0%の対象をさらに44サブカテゴリに拡大、全国一律のRM2送料リベート、東マレーシア向け海上輸送や全国の自己集荷ポイントといった物流面の拡張、セラー支援の「JomLokal Club」など(TikTok Newsroom Malaysia 8月20日、報道はThe Rakyat PostPokde.Net 8月23日)。

6月分の中身はThe Edge Malaysiaが報じています。6月30日のPesta #JomLokalで発表され7月1日に開始した「Jualan Ihsan Rahmah」で、果物・野菜・冷凍シーフード・調理必需品など56サブカテゴリが手数料0%、乳製品5サブカテゴリを追加、医薬品や缶詰など39カテゴリは手数料を0.5〜9.1ポイント引き下げ、加えてRM2の送料リベート、というものでした(The Edge Malaysia 7月1日付)。8月の44サブカテゴリは公式リリースでも「additional(追加)」とあるだけで、何に対する追加なのかは明示されていません。6月時点の56サブカテゴリ+乳製品5に上乗せされたものと読むのが自然ですが、合計値は公表されていないため、ここでは足し算をしないでおきます。

実績としてTikTok Shop側は、#JomLokal対象のセラー・クリエイター40万、商品80万点、対象セラーの売上が前年同月比140%増(2025年6月→2026年6月)、LIVE経由がプラットフォーム売上の約3分の1で前年比48%増、利用者の約6割がLIVEを買い物の形式として好む、といった数字を挙げています(TikTok Newsroom Malaysia)。8月20日の発表はアンワル・イブラヒム首相が開会し、ファミ・ファジル通信相、アルミザン・モハド・アリKPDN相らが出席しています(The Rakyat Post)。

セラー視点: 数字はすべてTikTok Shopの自社集計で、第三者が追試できるものではありません。「140%増」も対象セラーという選ばれた母集団の話で、プラットフォーム全体ではない点は割り引いて読む必要があります。そのうえで、実務的に効くのは手数料0%の対象が「地元(lokal)」の生鮮・食品・生活必需品に置かれていることです。プログラム名のとおり地元セラー向けの建て付けで、公式リリースにも報道にも越境・海外セラーへの適用は書かれていません(除外規定が明記されているわけでもないので、「対象外」と断定はできません)。少なくとも明示的な対象には入っておらず、同じ検索結果に手数料負担ゼロの地元商品が並ぶ、という構図で読むことになります。生鮮や食品はもともと越境の土俵ではないので直撃ではありませんが、マレーシアで価格勝負のカテゴリに入るなら、値付けの前提が地元セラーと違うことは意識しておく話です。むしろ効くのは、LIVEが売上の3分の1という比率のほうかもしれません。

インドネシア: 地元商品は個数+51%、GMVは+14%

TokopediaとTikTok Shopは8月13日、独立記念日に合わせた「Beli Lokal」施策の実績をジャカルタで公表しました。Tokopedia/TikTok Shop IndonesiaのLocal Business Empowerment担当Cut Dartina Rinatha氏の説明として、2026年上半期にBeli Lokal登録セラーが50%増、キャンペーンGMVが14%増、販売個数が51%増、と報じられています(Kompas.com 8月13日)。カテゴリ別ではファッションが22%、自動車・電子が14%、FMCGが12%、ライフスタイルが11%の伸びとされています(同。ただし記事はこれが個数の伸びかGMVの伸びかを書いていません)。

ここは数字の読み方に注意が要ります。同じ記事の見出しは「7億個、51%増」と読めますが、Dartina氏の発言では7億個は「これまでにこの施策から売れた累計」("Hingga saat ini sudah lebih dari 700 juta produk lokal telah terjual dari inisiatif ini")であり、51%は上半期の伸び率です。7億個が上半期の数字だと読むと過大になります。Marketing-Interactiveの記事も「51%増えて7億個近くに」と両者を接続して書いていますが(Marketing-Interactive 8月18日)、Kompasが引いた発言に沿えば別々の数字です。

セラー視点: この3つの数字は、並べたときに形が見えてきます。セラー+50%、個数+51%に対して、GMVは+14%。売り手も売れた個数もおよそ1.5倍になったのに、金額は1.14倍しか増えていません。

ただし、この3つを割り算する前に断りが要ります。発言でGMVだけが「キャンペーンGMV」と限定されている一方、個数とセラー数には限定語がなく、3つが同じ母集団の数字なのかは出典から確定できません。同一スコープだと仮定した単純計算では、1個あたりの単価は上半期におよそ4分の3(1.14÷1.51≒0.76)、セラー1社あたりのGMVも同程度に縮んだ計算になります。加えて、単価の低下は値下げだけでなく、安いカテゴリの構成比が上がったことでも起きます(ファッションの伸びが最も大きいと報じられている点はその可能性を示唆します)。それでも、同じ売り場に売り手と売れた個数が増えているという方向は3つの数字に共通しています。キャンペーンとしての成功と、売り手ひとりあたりの取り分は別の話だ、ということです。

日本から直接出す経路については、Shopee Japanのトップページが対応マーケットとしてシンガポール・台湾・タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナム・ブラジルの7つを挙げており、インドネシアはここに含まれていません(Shopee Japan)。同社サイト内には販売可能マーケットを5つ(シンガポール・台湾・タイ・マレーシア・フィリピン)と記載した2023年5月17日付のコラムも残っていますが、ここでは現行のトップページの記載を採っています。どちらにもインドネシアは入っていません。現地の代理店や輸入業者経由で商品を置いている場合の、値付けの相場観として見ておく数字です。なお、これらもTokopedia/TikTok Shopの自社集計です。

短信: 次に見ておきたい動き

  • インドネシアの化粧品ハラール義務化は10月18日から、延期なし: BPJPH(ハラール製品保証実施庁)長官のAhmad Haikal Hasan氏は6月10日の国会第8委員会との協議で「2026年10月のハラール義務化に延期はない」と明言し、2026年10月18日から施行、対象には化粧品、化学製品・遺伝子組換え製品、生薬(obat bahan alam)・医薬部外品・健康補助食品、衣類やアクセサリ・家庭用品などの「使用物品(barang gunaan)」が含まれ、輸入品も対象と整理されています(BPJPH)。化粧品については、BPJPHが2025年5月14日時点で「17日以降は義務」として輸入化粧品7,558品目・国産81,343品目が既に認証済みと公表しています()。なお日付の書き方は同じ官庁の資料内でも揺れており、2026年6月の発表は「10月18日から施行」、2025年5月の化粧品向け発表は「10月17日以降は義務」となっています。上のセフォラの話と合わせると、インドネシアだけコスメの入口の条件が違う、という状態がもう1か月半後に来ます。
  • MINISOのサンリオ東南アジアツアー、9月21日はプトラジャヤ: 8月から10月にかけての5カ国ツアーで、公表済みの日程はシンガポールのBugis+が8月12日、クアラルンプールのPavilion KLが8月31日、プトラジャヤのIOI City Mallが9月21日。インドネシア(Beachwalk Bali、Central Park Mall)、タイ(Terminal 21 Asok)、ベトナム(Van Hanh Mall)は日程が公表されていません(Marketing-Interactive 8月12日)。ツアー自体の概要は8月20日号で扱っています。

今週の出来事の網羅は週刊ダイジェスト2026年9月1日号にまとめています。