今週は、SNSの流行が現地の店にどうつながっているかを3つの角度から見ます。バンコクでは、花輪を髪に巻くヘアスタイルがSNSから広がり、花市場に行列ができました。Shopee Japanが9月3日に公表した7月の売れ筋では、フィリピンとシンガポールで抹茶が、マレーシアとシンガポールで同じサプリメント2商品が売れ筋に入りました。日本のドーナツ店I'm donut?は9月12日にクアラルンプールで東南アジア1号店を開き、シンガポールとジャカルタが続きます。
バンコクの花市場に「花輪ヘア」の行列。ベトナムでは花のランタン
タイで9月に広がったのは、寺院や祠に供える花輪(プアン・マーライ)を、まとめた髪に巻きつけるヘアスタイルです。現地では「マーライ・ラットクラオ(花輪で結った髪)」などと呼ばれています。
THE STANDARDは9月21日、バンコクの花市場パーククローン・タラートで取材しています。流行の発端とされる生花店によると、8月から兆しがあり、9月上旬にピークを迎えました。この店では週末の客が1日平均500人、花輪代と髪結い込みで1人120バーツ、24時間営業です。取材当日の21日は、朝6時から14時までで200人を超えました。周辺では、新たに6〜7店が同じサービスを始めたといいます(THE STANDARD)。Thai PBSは同じ日、相場を1人70〜120バーツと伝えました。多くの売り手がライブ配信で結い方を見せて客を呼んでいること、列にはタイ人のほか外国人観光客も並んでいると報じています。取材を受けた10代の客3人は「中国人も欧米人もタイ人も並んでいる」と話しています(Thai PBS)。
発端については、Z世代のインフルエンサーが手首に巻く花輪を髪のまとめに巻いてもらい、その動画がTikTokとInstagramで一気に広がった、という話が出回っています(Time Out Bangkok)。ただしThai PBS Worldは、正確な起点ははっきりしないとしています(Thai PBS World)。Bangkok Postによると、白や落ち着いた色のシンプルな服に合わせ、ワット・アルンや王宮で写真を撮るのが定番の形です(Bangkok Post)。
伝統を今の服に合わせる流行は、今年これが初めてではありません。年初からは伝統の肩掛け布「サバイ」をジーンズに合わせる着こなしが広がり、一部の地域では貸衣装店の客が増えたと報じられました(Spring News)。今春には、ハスの花を手に、同じ市場や隣のメモリアル橋で写真を撮る流行もありました。時期はThai PBS Worldが3月、Time Out Bangkokが4月としていて、一致しません(Thai PBS World、Time Out Bangkok)。
ベトナムでも、中秋節(9月25日)を前に似た動きがありました。ホーチミン市では、竹の骨組みに生花や造花、リボンを飾り、電飾を付けた「花のランタン(lồng đèn hoa)」が人気になりました。昨年から売られていましたが、今年の中秋で一気に広がったといいます。作り手の1人は1個に約45分かけ、1日に作れるのは10個余り。大きいものを170,000ドンから、小さいものを45,000ドンから売っています。注文が多いため、中秋の時期は集合住宅の前での販売をやめ、オンラインの注文だけを受けていました。TikTokでは「花のランタン」が流行のキーワードになっていました(Tuổi Trẻ)。
セラー視点: 2つとも、売れているのは生花などを使った現地の手仕事です。日本から越境で送れる商品ではありません。報道の中に、関連して動いた越境向け商品の数字も見当たりませんでした。押さえておきたいのは流行の型のほうです。タイでは、サバイ、ハス、花輪と、自国の伝統を今の服に合わせる流行が今年に入って3度続きました。そのたびに受け皿になったのは、現地の花屋や貸衣装店です。売り手の側も、ライブ配信(タイ)やオンラインでの受注(ベトナム)で客を集めていました。SNS発の流行がそのまま輸入品の需要になるとは限らない例として、覚えておく価値があります。
Shopee Japanの7月売れ筋: 抹茶はフィリピンとシンガポール、同じサプリがマレーシアとシンガポールに
ショッピージャパンは9月3日、2026年7月に7市場で売れ筋だった日本商品を公表しました。市場ごとに2〜3商品を挙げていますが、順位の基準(販売数か金額か)や数量は書かれていません(ショッピージャパン)。東南アジアと台湾の顔ぶれは次のとおりです。
- シンガポール: Herbaseのナットウキナーゼサプリ、丸久小山園の抹茶(京都宇治産・セレモニアルグレード)、Vitanad+のNMNサプリ
- マレーシア: HADARIKIの目元用クリーム「クマージック」、Vitanad+のNMNサプリ、Herbaseのナットウキナーゼサプリ
- フィリピン: 丸久小山園の抹茶パウダー(セレモニアルグレード)、サンベアーズの日焼け止め、ロート製薬の目薬「Cool Vita 40」
- タイ: AQUALABELのスペシャルジェルクリームEX(2種)、Waterfrontの折りたたみ傘「POKEFLAT 2.0」
- ベトナム: IHADAの薬用フェイスプロテクトパウダー、Wafood Madeの酒粕マスク、キャンメイクのマシュマロフィニッシュパウダー
- 台湾: HOYU CIELOの白髪染め、UHA味覚糖の栄養グミ
リリースでは、フィリピンは「産地とグレードを明確に打ち出した日本商品が選ばれる傾向」、マレーシアは「日本製で高配合量をうたう商品への信頼が、購買の決め手」とされています。マレーシアとシンガポールでは、同じサプリ2商品が両方の売れ筋に入りました。台湾のUHA味覚糖の栄養グミも、リリース上のカテゴリは「健康食品・サプリメント」です。
抹茶は、同じ7月の貿易統計と並べると見え方が変わります。日本茶輸出促進協議会が財務省貿易統計をもとにまとめた7月分によると、粉末状の緑茶の輸出は次のとおりでした。シンガポール向けは5,632kgで、前年同月の50.5%。1kgあたり単価は5,788円から11,340円になっています。フィリピン向けは7,467kgで、前年同月の53.1%。単価は5,120円から9,735円です。金額はほぼ前年並みで、シンガポールが98.9%、フィリピンが101.0%でした(日本茶輸出促進協議会)。ASEAN全体で数量が約半分になったことは9月25日のトレンドウォッチで扱いました。
セラー視点: 同じ7月に、両国向けの粉末茶は数量が約半分、単価が約2倍になりました。それでもShopeeでは、産地とグレードを明記した抹茶が売れ筋に入っています。ただし、貿易統計はすべての経路の合計でECの分は分かりません。Shopeeの側も数量を示していません。2つを合わせて言えるのは、単価が上がった月にも、産地とグレードを名指しした商品が売れ筋に入ったというところまでです。サプリは、マレーシアとシンガポールで同じ商品が並んだことから、近い2市場で同じ品ぞろえが通用した例として読めます。
I'm donut?: クアラルンプールに東南アジア1号店、シンガポールとジャカルタが続く
日本の生ドーナツ店I'm donut?は9月12日、クアラルンプールの商業施設The Exchange TRXに東南アジア1号店を開きました(I'm donut?の発表文)。Malay Mailによると、店は約2,000平方フィートで、30種類を超える品ぞろえのうち16種類がマレーシア限定です。マイロ、チャム(コーヒーと紅茶のミックス)、パンダン、ココナッツなど、現地でなじみのある素材を使っています(Malay Mail)。
開店日の様子は、TheSmartLocalが伝えています。開店前から行列がロープで仕切られ、朝食のつもりで並んだ記者が店に入れたのは昼食の時間でした。購入数の制限を設けることがあり、店内での飲食はできません。また、日本では生地にカボチャを使いますが、マレーシアではバナナに置き換えており、食感が少し違うとしています(TheSmartLocal)。
次はシンガポールです。同社は9月28日、公式Instagramで「Singapore? 2026 — Coming Soon…」と予告しました(I'm donut?公式Instagram)。場所と開店日はまだ発表されていません。AsiaOneによると、同社は2022年に日本で創業し、国内に15店、海外にはクアラルンプールのほか、ニューヨーク・台北・ソウルに店があります。ジャカルタでは10月に開店予定です(AsiaOne)。シンガポール向けのInstagramアカウントも開設されています(Time Out Singapore)。インドネシアでは、Erajaya Swasembada傘下の飲食部門EFNが展開を担います。EFNの取締役は6月29日の会社説明会で、同部門のブランドのうち今後もっとも大きく広げるのはI'm donut?になるかもしれない、と述べていました(IDNFinancials、Bisnis.com)。
セラー視点: 生ドーナツそのものは越境で扱う商品ではありません。参考になるのは出し方です。日本と同じ店名と看板商品で出しながら、30種類超のうち16種類を現地限定の味にしています。生地の素材も現地で置き換え、インドネシアでは現地企業が展開を担います。日本ブランドが「日本らしさ」をどこまで残し、どこから現地に合わせたかの一例です。
短信: 次に見ておきたい動き
- Shopee Japanの8月分の売れ筋: 7月分は9月3日に出ました。8月分で、抹茶とサプリが引き続き入るかを確認します。
- I'm donut?の続報: シンガポール店の場所と開店日、10月予定のジャカルタ店の開業が次の材料です。
今週の出来事の網羅は週刊ダイジェスト2026年9月28日号にまとめています。
