先週号では9.9の実績としてLazadaの域内集計とShopeeフィリピンの数字を紹介しましたが、どちらも「プラットフォーム全体」の話でした。今週は、日本の越境セラーに限った9.9の実績がShopee Japanから出ています。同じ週に台湾の8月小売統計とシンガポールの8月物価が公表され、フィリピンの家計心理は「悲観が和らいだ」段階まで来ました。まず何が売れたかを見て、次に各国の家計の状況、最後に10.10の日程と運用上の連絡事項を並べます。末尾に先週号の訂正があります。

9.9の日本越境セラー実績: ベトナムの注文数は第2四半期平均の6倍、文房具はフィリピンが牽引

ショッピージャパンが9月24日に公表した「9.9 Mega Day」(9月9日)の実績は、日本の越境セラーだけを集計したものです(ショッピージャパン)。

  • ベトナム: 9.9当日の日本の越境セラーの注文数は、2026年第2四半期の1日平均の6倍。日本の越境セラーから初めて買ったユーザーの注文数は前年の9.9比で214%増え、当日の注文の59%を新規購入者が占めました
  • 日本ブランド: 注文数は前年比で2倍超。日本の越境セラーの中で注文数1位はSHISEIDO Japanで、タイでは同社の注文数が前年比442%増。同社の9.9の注文の約67%は、同社ショップで初めて買った客によるものでした
  • カテゴリー: 注文数・GMVとも最大はビューティー。ほかに文房具の注文数が前年比83%増(フィリピンが牽引)、スポーツ・アウトドアの注文数が66%増(マレーシア・タイが寄与)
  • ライブ・動画: Shopee Live経由の注文数は第2四半期の1日平均の約6倍、Shopee Video経由は約3倍、Shopee Video経由のGMVは前年比98%増
  • 物流: 日本の越境セラー全体の当日の注文数は第2四半期の1日平均の約2.9倍で、期限内出荷率は約98%

読むときの注意が2つあります。1つ目は、比較の基準が項目によって**「第2四半期の1日平均」と「前年の9.9」の2種類**あることです。ベトナムの「6倍」は平常日との比較で、年ごとの伸びではありません。2つ目は、注文数やGMVの実数が一切出ていないことです。伸び率が大きいのは、母数が小さい市場やカテゴリーである可能性もあります。それでも、カテゴリーごとにどの国が伸びを引っ張ったかまで書かれているので、「ビューティー以外で動いた棚」を国別に確認する材料にはなります。

Lazadaベトナムも同じ週に国別の数字を出しています。9.9期間の平均注文単価は前年比でほぼ倍、100米ドル超の注文がベトナムのGMVの42%(域内全体では約60%)、アフィリエイト経由がGMVの45%(域内全体では約30%)でした。LazMallのGMVは平常日比で917%増ですが、これは前年比ではなく平常日との比較です。TmallとGmarketの商品のGMVも平常日比872%増でした(VnExpress)。ベトナムでは、Shopee側で日本セラーの新規購入者が増え、Lazada側ではTmall・Gmarketの商品のGMVが平常日比で大きく伸びました。ただし、いずれもプラットフォーム自身の集計です。

台湾の8月小売は+6.5%、ネット通販は+8.5%

台湾の経済部統計処が9月23日に公表した8月の小売業売上高は4,168億台湾ドルで、前年同月比+6.5%でした。業種別では、電子購物及郵購業(ネット通販・通信販売)が+8.5%、食品・飲料・たばこ小売が+13.1%、スーパーが+8.7%、量販店が+9.0%、百貨店が+8.4%、情報通信・家電が+10.9%でした。統計処は要因として、中元普渡(旧暦7月の供養行事)と中秋節の贈答品の購入、百貨店の新しい商業施設とブランドの開業、スマートフォン新製品の好調を挙げています。1〜8月の累計は3兆2,983億台湾ドルで+4.9%です(経済部統計処)。

小売業は7か月連続のプラスで、8月として過去最高の水準です。統計処は9月の小売売上高を4,104億〜4,223億台湾ドル(前年同月比+3.6〜6.6%)と見込んでいます。飲食業の8月は950億台湾ドルで+1.8%にとどまりました。卸売業は+65.4%と過去最高の伸びですが、こちらはAI・サーバー関連の電子部品が主因で、消費とは別の話です(MoneyDJ)。節句の贈答需要が食品・スーパー・量販店を押し上げ、そのうえでネット通販が小売全体を上回る伸び、というのが8月の姿です。

シンガポールの8月物価: コアは+2.2%、小売品は衣料・パーソナルケアが上昇

シンガポール通貨庁(MAS)と貿易産業省(MTI)が9月23日に公表した8月の消費者物価は、コア(住宅費と自家用車関連を除く)が前年同月比+2.2%(7月は+2.0%)、総合が+2.3%(同+2.2%)でした。コアの上昇はサービス、小売品その他、食品の3区分の伸びによるものです(MAS・MTI)。

EC出品者の商品に近いのは「小売品その他」の区分です。この区分の上昇率は+1.4%から**+1.8%へ加速し、MAS・MTIは要因として衣料・履物とパーソナルケア製品**の値上がりを挙げています。食品は+2.2%から+2.3%で、外食が上がる一方、外食以外の食品は伸びが鈍りました。サービスは航空運賃などで+1.7%から+2.0%です。見通しでは、原油高と天候不順を背景に、輸入される財・サービスの価格が今後の四半期で上がっていくとしています。2026年通年の予測はコア・総合とも1.5〜2.5%で据え置きです(同発表の添付資料、AsiaOne)。価格の上昇は、見方を変えれば値付けの環境が変わっているということです。同じ棚の現地価格が動いている月だと把握しておけば、自分の値付けを見直すときの材料になります。

フィリピンの家計心理: 悲観は和らいだが、支出の見通しは弱まった

フィリピン中央銀行(BSP)の第3四半期の消費者期待調査(7月に実施、5,476世帯)では、今期の消費者信頼感指数が-29.8で、第2四半期の-42.0から改善しました。来期の見通しは-16.3から**-0.8**へ大きく改善し、12か月先の見通しは0.2から9.1です。改善の理由として、収入の増加、新しい収入源、雇用の安定が挙げられています。ただし内訳は一方向ではありません。支出の見通しは楽観度が下がり、高額品の購入意向は悲観度が下がりました。貯蓄の意向はプラスに転じ、1年先の物価予想は3.3%から4%に上がっています(SunStar)。The Manila Timesは、指数のマイナスは悲観が楽観を上回っていることを意味し、消費者の信頼感は3年以上マイナス圏が続いていると伝えています(The Manila Times)。数字はいずれもBSPの発表を報じた記事によるもので、BSPの資料そのものは確認できていません。

今期の指数はまだマイナス圏です。来期の見通しがほぼゼロまで戻る一方で、財布は貯蓄に向かっています。家計の気分と支出の意向は分けて見る必要がある、というのが今回の調査です。

タイ: 補助金は11月末まで延長。使われ方は日常の飲食に集中

先週号で9月22日の閣議に諮られると書いたタイの共同負担型補助「Thais Help Thais Plus(タイ・チュアイ・タイ・プラス)」は、9月22日の閣議で延長が決まりました。10月1日〜11月30日の2か月間に1人あたり計1,000バーツを追加します。財源は既存の借入枠の残り(約440億バーツ)で、福祉カードの10月分の上乗せと合わせて430億バーツを充て、新たな借入はしません。9月21日時点の累計支出は1,644億7,000万バーツ(政府945億5,300万、参加者699億1,700万)、参加者は2,604万人です。財政政策局長のVinit Visessuvanapoom氏は、参加者の51%がこれまでの3か月で割当額を使い切っておらず、購入は日常の食品・飲料に集中していると説明しています(The Nation Thailand)。なおThai PBS Worldは同じ51%を「約2,600万人の参加者が割当予算の51%しか使わなかった」と書いており、何に対する51%かの記述が2つの報道で一致していません。既存の参加者はPao Tangアプリで9月30日から第2期への参加を確認でき、制度はタイ国籍者のみが対象です(Thai PBS World)。

物価の側では、10月1日から日用品が5〜10%値上がりするという話が広がりました。これに対し商務省国内取引局長のWittayakorn Maneenetr氏は9月24日、重点監視する16品目について値上げ申請を承認していないと説明しています。一方で同じ記事は、4月以降に値上げが続き、9月中旬にも3in1コーヒー、魚の缶詰、石けん、歯磨き粉、パウダー(แป้งฝุ่น)などが5〜10%上がったと報じています。局長は、消費者が値上がりと感じる理由を2つ挙げています。1つはまとめ買い割引などの販促が縮小したこと、もう1つは承認済みの上限価格の範囲内での値上げです(Thansettakij)。延長された補助の期間に11.11が入り、12.12は外れる、という日程は先週号で書いたとおりです。

Lazada調査: 「慎重な買い手」の比率は国で4倍の差

LazadaとデータアナリティクスのCubeは9月24日、東南アジア6か国の6,000人超を対象にした購買行動調査を公表しました。商品の真偽確認・お得度の比較・購入者保護の理解・デジタルツールの活用の4項目すべてで域内の中央値を上回る人を「Savvy Shopper(慎重な買い手)」と定義しています。タイではこの層が22%で、一般の買い手より月の支出が27%多いとしています。回答者全体では、43%が良い条件を探す時間を延ばしてもよい、41%が待ってもよいと答えた一方で、値引きと引き換えに正規品の保証を手放してもよい人は13%、購入者保護なら12%にとどまりました(Retail News Asiaは14%・13%と報じており、数字が一致しません)。**タイでは38%が最低購入額に届かせるために買い増すと答え(域内平均28%)、52%がキャンペーンまで購入を待つ(同41%)**としています(Lazadaタイ)。

国別の比率はLazadaタイのリリースには無く、報道で確認しました。「慎重な買い手」は回答者全体の24%で、国別ではフィリピン36%、インドネシア28%、ベトナム25%、タイ22%で、シンガポールが9%と最も低くなっています(Retail News Asia、Singapore Business Review)。シンガポールでマーケットプレイスを週1回以上使う人は48%で、他の5か国の66%を下回っており、報告書はこれが一因の可能性があるとしています(Singapore Business Review)。これはLazada自身が関わった調査で、調査時期の記載はありません。タイの「キャンペーンまで待つ52%」は、上の補助金の期間とメガセールの日程が重なる国の数字として読んでおく価値があります。

セールカレンダー: 10.10はマレーシアが9月26日、シンガポールは10月1日に開幕

10.10の2026年の会期を公式に確認できたのは、ShopeeマレーシアとShopeeシンガポールです。マレーシアの「10.10 Brands Festival」は9月26日〜10月11日で、VIP会員の先行アクセスは10月7日から、著名人による「Daily Superstar Livestreams」は10月2〜10日(5日を除く)に毎日行われます(Shopeeマレーシア)。シンガポールはキャンペーンページ(予告版)のメインバナーが会期を10月1〜17日としており、10月1日にVIP会員の先行アクセス、10月2日にセール開始、10月9日20時に限定ドロップ、という段取りです。Lazadaの10.10は、どの国でも公式告知を確認できていません。

シンガポールでは、この会期中にAmazonシンガポールの「Prime Big Deal Days」(10月6日0時〜8日23時59分、シンガポール時間)が重なります。Prime会員限定で、米国・日本・ドイツのブランドを打ち出しています(Amazonシンガポール)。常設のセールカレンダーに反映しました。

短信

  • マレーシア、ECプラットフォームの免許制を準備: 通信副大臣のTeo Nie Ching氏は9月22日、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)は現行法でECプラットフォームに免許を出す権限を持っており、条件は国内取引・生活費省と財務省の判断を待っていると述べました。超低価格で知られる中国系の大手ECプラットフォームへの国内小売業者の懸念を受けたもので、同氏は「特定の1社ではなくすべてのECプラットフォームが対象」としています(Malay Mail)。条件はまだ示されていません
  • フィリピン、オンライン販売者の登録シール掲示の猶予は10月31日まで: 内国歳入庁(BIR)は通達RMC 99-2026で、ウェブサイトやECプラットフォームの店舗ページなどに「BIR Registration Seal Badge」を掲示する義務について、10月31日までは未掲示だけを理由とする罰則を科さないとしました。対象はオンラインで商品・サービスを売る事業者で、ライブ配信者やインフルエンサーも含みます。バッジはBIRのオンライン登録システムから無料で取得できます(The Manila Times)。日本から越境で出品しているセラーが対象になるかどうかは、記事からは読み取れません
  • シンガポールでリユースの越境・店舗が相次ぐ: 韓国の中古マーケットBunjangがCarousellシンガポールに公式ストアを開きました。Bunjangのシンガポール向け越境GMVは2026年上半期に前年比43%増、取引件数は53%増。カテゴリー別ではK-POPグッズがGMVの半分近くを占めています(Retail Asia、MARKETECH APAC)。日本からは、いーふらんの買取店「おたからや」がシンガポール4号店をChangi City Pointに開きました。同社は、金などの貴金属の買取依頼が急増しているとし、ブランドバッグや高級時計にも安定した買取需要を見込んでいます(いーふらん)。東南アジアのリユース市場については9月25日のトレンドウォッチで2nd STREETのタイ展開を扱っています
  • REGALがジャカルタに東南アジア初の店舗: リーガルコーポレーションは9月25日、ジャカルタの高級モール「パシフィックプレイス」に東南アジア初のブランドコンセプトストアを開きました。ビジネスシューズに加え、カジュアルシューズやスニーカーもそろえます(リーガルコーポレーション)
  • バンコク全50区に洪水の災害区域宣言: バンコク都は9月26日、洪水の災害区域の宣言を全50区に広げました。前日に災害区域とした3区(ノンチョーク、スアンルアン、カンナヤオ)から、大雨の継続を受けて拡大しました。宣言では交通の乱れにも触れています(The Nation Thailand)。配送への影響を示す数字は出ていません

訂正: インドネシアのEC源泉徴収は11月1日開始の方針です

先週号の短信で「Tokopedia・Shopee・Lazada・Blibliによる出品者売上の源泉徴収が10月1日開始に前倒しされた」と書きましたが、これは誤りでした。9月17日付の報道では、税務総局長のBimo Wijayanto氏の発言として「10月1日から」とされていましたが(CNN Indonesia、9月17日)、9月18日には本人が「マーケットプレイスは10月31日まで延期されている。神が望めば、11月1日から各プラットフォームの準備状況に沿って施行する」と述べており、11月1日から施行する方針です(CNN Indonesia、9月19日、IKPI)。先週号は18日より前の発言を報じた記事に依拠していました。税率(総取引額の0.5%)と対象の4社に変更はありません。先週号の該当箇所も修正しました。