今週は「日本産がどれだけ買われているか」を示す数字が出そろいました。農林水産省の上半期輸出実績は2年連続の過去最高で、ベトナム向けが35.4%増、緑茶が83.5%増。一方、東南アジアのキャラクターIP市場ではPop Martの成長が踊り場に入りました。米国では玩具購入の5件に1件を大人が占めるという数字も出ています。ベトナムのECでは価格帯の重心が静かに上へ動き始めました。

日本の食品輸出、上半期8,977億円で最高更新——ベトナム向けは35.4%増、緑茶は83.5%増

農林水産省が8月4日に公表した2026年1〜6月の農林水産物・食品の輸出実績は8,977億円、前年同期比10.9%(880億円)増で、上半期としては2年連続の過去最高でした(前年同期は8,097億円)。首位の米国が1,626億円(15.3%増)、香港1,100億円(3.0%増)、中国940億円(4.3%増)、台湾882億円(9.5%増)と続きます(農林水産省の公表資料PDFフードウイークリーWEB)。共同通信によれば輸出先の上位10カ国・地域はすべて前年同期を上回り、東南アジア関連で目立つのはベトナムで、ホタテ貝やサバの引き合いが強く35.4%増。韓国もブリやビールが伸びて20.5%増でした(共同通信/Web東奥)。

品目別では緑茶が83.5%増と突出し(増加額は約220億円)、ぶりが69.0%増(同約178億円)。牛肉、りんご、米、ソース混合調味料なども上半期として過去最高を更新しています(農林水産省の公表資料PDF事業構想オンライン)。農水省は要因として、インバウンド増加で日本産食品の認知度が上がったことと健康志向の広がりを挙げ、これまで日本食を扱っていなかったスーパーやレストランで新規の販路も広がったとしています(共同通信/Web東奥)。

ただし手放しでは読めません。米は金額が11.6%増える一方で数量は13.7%減——価格上昇が金額を押し上げている面があります(時事通信)。伸び率も、15.5%増だった前年同期と比べれば鈍化しています(共同通信/Web東奥)。2030年に5兆円という政府目標に届くには、残り5年で年24.1%の成長が必要という試算も紹介されています(事業構想オンライン)。

セラー視点: 食品は賞味期限と各国の輸入規制があり、日本発Shopeeの越境で気軽に扱える商材ではありません。それでもこの統計が示すのは「日本産に払う金額が増えている」という需要側の事実です。緑茶の83.5%増は、7月に整理した抹茶需要がまだ失速していないことの裏付けでもあります。一方で米に見られる「金額増・数量減」は、値上げを吸収してもらえる余地が縮んできたサインとして押さえておきたいところです。

Pop Mart、2026年は「維持の年」——キャラIPは「持つ」から「体験する」へ

先週のトレンドウォッチで取り上げたPop Martのシンガポール・セントーサ店について、Inside Retail Asiaが8月5日に事業構造の分析を出しました。数字を並べると転換点が見えます。2025年通期の売上は371.2億元(約54億ドル)で184.7%増、粗利率72.1%、純利益は約4倍。うちLabubuを含むThe Monstersシリーズが141.6億元と、グループ売上の約38%を占めました。ところが2026年第1四半期は、売上こそ前年同期比75〜80%増ながら、中国を除くアジア太平洋の伸びは25〜30%に減速。経営陣は海外売上の前四半期比減少を「海外での顧客の蓄積が不十分」と説明しています。創業者兼CEOの王寧氏は2026年を「維持の年(maintenance year)」と呼び、HSBCは成長予想を引き下げました(Inside Retail Asia)。

その裏返しが多角化です。北京のテーマパークPop Landは2025年の来場者が約70%増、Sony PicturesとのLabubu映画、2025年6月に始めたジュエリーブランドPopop、そして今回のPop Bakery。ディズニー(2024年のライセンス小売売上はLicense Global推計で620億ドル)やサンリオ(同84億ドル)がライセンス収入で稼ぐのに対し、Pop Martは設計・製造・流通・販売を自社で握る垂直統合型で、そのぶんIPの集中リスクを自ら抱えます。セントーサ店はユニバーサル・スタジオ・シンガポール向かいの2階建てで、キャラクターを模したペイストリーとドリンク45種をS$5〜32で販売。タイ・インドネシア・マレーシアへの展開も計画されています(The Manila Times)。

セラー視点: 中国外アジア太平洋の伸びが25〜30%まで落ち、海外売上が前四半期比で減ったということは、「Labubuを仕入れて転売益」が前提にしてきた需給が、少なくとも同じ条件では続いていないということです。IPそのものの需要が消えたわけではなく、会社側の投資先はベーカリーやテーマパークといった体験に寄っています。日本セラーにとっては、値動きの読めない投機商材を追うより、正規ライセンスの日本IPグッズを定番として積む方が計算しやすい局面と言えます。

「キダルト」が下支えする玩具需要——米国では玩具購入の5件に1件が大人

Inside Retail Asiaは8月6日、玩具ブランドが大人客を取りに行く動きも報じています。調査会社Circanaのデータとして、米国の大人の玩具支出は2025年に91億ドル超で、2024年6月までの1年間の70億ドル超から拡大。玩具購入のおよそ5件に1件が大人によるものです。Crayolaは自社の売上の50%超が「子どものいない世帯の大人」から来ていることを把握し、2026年6月に最高104.99ドルのマーカーを含む「All Grown Up」コレクションを投入。6月29日にブルックリンで開いたポップアップには2,000人以上が集まりました。Play-Dohは24.99〜39.99ドルの「Blooms by Play-Doh」を今年前半に発売、Legoは2020年に始めた大人向けカテゴリを軸に2025年の売上を835億デンマーククローネ(約130億ドル)、12%増としています(Inside Retail Asia)。

数字は米国中心で、そのまま東南アジアに当てはめることはできません。ただ東南アジアでも同じ方向の店舗投資は起きています。4月末から5月初めにかけての発表によると、MINISOは2026年前半にIP特化型のMINISO LAND/FRIENDS業態をシンガポール・マレーシア・インドネシア・ベトナムへ広げており、4月25日に開いたベトナム初のMINISO FRIENDS店(ホーチミン)は商品の7割超がIP商品、同日開店のシンガポール・VivoCity店は3,200SKU超、バンコクのサイアム・スクエア旗艦店は80以上のIPで8,300商品を扱います。棚にはサンリオ、ちいかわ、ディズニーが並びます(Marketing-InteractiveMINISO公式)。

セラー視点: 買い手は「子ども用」ではなく「自分用」として玩具・文具・ホビーを見ています。日本の商材を出すなら、対象年齢ではなくコレクション性・飾れるか・質感で見せた方が刺さる層がいる、ということです。ちいかわやサンリオが現地の一等地の棚に常設で並んでいる事実は、日本IPグッズの需要が一過性ではないことの傍証にもなります。

ベトナムの売れ筋は依然10万〜20万ドン、ただし低価格帯は縮み高単価帯が拡大

ベトナムのデータ分析会社Metricの2026年上半期レポート(7月公表)によると、主要4サイト(Shopee、TikTok Shop、Lazada、Tiki)の流通総額は291.6兆ドンで44.11%増。一方で販売数量の伸びは13.67%にとどまりました。金額が数量の3倍以上の速さで伸びているということは、単価が上がっているということです。実際、100万ドン超の高価格帯のシェアは前年同期から3.1ポイント広がって18.2%になりました(Metric)。

価格帯の分布では10万〜20万ドンが22.9%で依然として最大シェアですが、この帯自体は前年同期の26.3%から3.4ポイント縮小しており、10万ドン未満も4.2ポイント減の18.1%に縮んでいます。増えているのは20万ドン以上の帯です(MetricVietnam.vn)。カテゴリ別では美容が49.5兆ドンで首位、レディースファッション40.4兆ドン、家庭・生活37.7兆ドンと続きます(VietnamNet)。Metricは第3四半期を146.3兆ドンと予測し、7月の夏休み旅行と8〜9月の新学期商戦を需要の山として挙げています(Metric)。

セラー視点: 前提をひとつ。Shopee Japanが案内する「日本から出店可能」な国はシンガポール・マレーシア・フィリピン・タイ・台湾の5カ国で、ベトナムはそこに含まれていません(Shopee Japan公式コラム)。以下はベトナム市場そのものの需要データとして読んでください。売れ筋の中心が10万〜20万ドンの帯にあることは変わりませんが、その帯も低価格帯も1年でシェアを落とし、上の帯に食われている——これが今回のデータの形です。数量ではなく単価で伸びている市場では、安値の消耗戦より、品質と正規品であることが説明できる出品の方が取り分を残しやすくなります。8〜9月の新学期商戦に入る時期でもあり、仕込みのタイミングとして意識しておきたいところです。


今週の東南アジア全体のニュースは週刊ダイジェスト2026年8月3日号(w32)にまとめています。次に見ておきたいのは、8月8〜10日の8.8ウィークとASEAN Online Sale Dayの結果、そして7月単月の輸出実績です。農水省の統計ページによれば公表は9月2日13時の予定で(農林水産省)、緑茶の伸びが夏を越えて続くかどうかが、日本産食材の需要が定着したかを測る最初の目盛りになります。