今週はタイの話題を中心に3本です。米国のオーディション番組で優勝した16歳のギタリスト、Nene Royalを、タイのブランドが優勝から10日で10社起用しました。飲料で伸びてきた「高たんぱく」や栄養表示を、アイスクリームとお茶のチェーンも前に出し始めました。日本のTSUTAYA BOOKSTOREは10月20日、バンコクに1号店を開きます。
AGT優勝のNene Royal、10日で10ブランドが起用
プーケット出身の16歳、Nene Royalは9月24日(タイ時間)、米NBCのオーディション番組「America's Got Talent(AGT)」2026年の優勝者に決まりました。賞金は100万ドルです。7歳からネット動画で独学でギターを覚え、地元の週末市場で路上演奏をしていました。7月8日にAGTの公式チャンネルに出たオーディション動画で一気に注目を集めています(Bangkok Post)。
タイ国内の盛り上がりは数字にも出ています。タイのソーシャル分析会社Wisesightが自社ツール「Zocial Eye」で7月6日〜9月28日を集計したところ、Neneに関する投稿は86,084件、エンゲージメント(投稿への反応の数)は1億500万件超でした。最も多かったのは決勝の週(9月21〜27日)で、35,963件・約3,150万件です。集計対象のSNSの内訳は示されていません(Wisesight、The Nation Thailand)。10月4日にはバンコク中心部でパレードがあり、サイアム・パラゴンでの歓迎式典は満員でした(The Nation Thailand)。
企業の動きは素早いものでした。The Nationによると、優勝から10日のうちに少なくとも10ブランドが起用を発表しています。美容・パーソナルケアが6社(Smooth E、BSC、MizuMi、Pantene、Baby Bright、Mistine)、食品・飲料が4社(海苔スナックのTao Kae Noi、ウエハースのVoiz、パンのFarmhouse、飲むヨーグルトのDutch Mill)です(The Nation Thailand)。たとえばMistineは、アイライナーの製品群「MISTINE Eyeliner」のメインプレゼンターに起用しました(Brand Buffet)。Marketeer Onlineは、ヘアケア、洗顔、日焼け止め、メイクと、彼女の身支度の各段階にブランドが分かれて付いていると分析しています。名前は美容から日常の食品にも広がっていると指摘しています(Marketeer Online)。本人は10月4日の歓迎式典のあと記者団に、10件を超える話が来て驚いたと語りました。父親は、仕事を受けるには専門家の助言とマネジメントが必要だと話しています(Thai PBS World)。
セラー視点: 確認した報道の範囲では、10ブランドとも起用を発表しただけで、売上の数字は出ていません。エンゲージメントは反応の量で、購買の量ではありません。それでも、日焼け止め、スキンケア、パウダー、ヘアケアに一斉に「国民的な顔」が付いたことは事実です。Shopee Japanの7月の売れ筋では、タイでAQUALABELのジェルクリームが入っていました(10月1日号)。日本の商品が競う棚の隣で、店頭や広告の見え方が変わった、と押さえておく価値はあります。便乗する出品は、本人の名前や写真を無断で使うことにならないよう注意が要ります。
高たんぱく・栄養表示が牛乳の棚の外へ。アイスとお茶のチェーンも、マレーシアには植物性の肉スナック
Brand Buffetが10月7日に報じたところでは、タイのアイスクリームチェーン、スウェンセンズが高たんぱくのアイスクリームをミニクオートのサイズで発売しました(同社の公式サイトでは確認できませんでした)。ピーナッツバター味がたんぱく質35g、ダークチョコレート味が30gで、価格は279バーツです。観光地の7店を除く全店で売り、健康志向の客とZ世代を狙ってランニングクラブとも組んでいます(Brand Buffet)。お茶のチェーンCHAGEEのタイ法人は、アプリにカロリー計算機能を入れました。サイズや甘さを選ぶと、カロリーと糖・たんぱく質・脂質・炭水化物・カフェインの量が表示されます。10月5〜11日には、歩くか走った距離に応じて特典を出しています(5kmでサイズアップ、10kmで30バーツ引き、15kmで1杯買うともう1杯無料)。ストレートティーのセットは「1杯4キロカロリーから」と低カロリーも打ち出しています(CHAGEEタイ)。
高たんぱくの伸びを数字で確認できたのは、そのまま飲める乳飲料です。米農務省海外農業局(USDA FAS)のバンコク事務所が9月1日に出したレポートは、Nielsenタイのデータを引いています。それによると、そのまま飲める高たんぱく飲料の市場は2023年の7,340万ドル(2,000万リットル)から2025年の1億5,950万ドル(4,100万リットル)へ、2年で117%伸びました。一方、普通の乳製品は金額で9%減ったとしています。高たんぱく飲料はそれでも、乳飲料・植物性飲料の市場全体(10億5,700万リットル)のまだ4%です。主なブランドには、CP-Meijiの「Meiji High Protein」やDutch Millの「Whey Plus」(1回分あたり最大30g)が挙がっています。売り場も高級スーパーから、7-ElevenやLotus's Go Freshといったコンビニへ広がったとしています(USDA FAS)。バーツ建てでは2,443百万バーツから5,302百万バーツです(Marketeer Online)。
マレーシアでは、シンガポールのShnëdzが10月から、植物性たんぱくの冷凍スナックをスーパーのVillage Grocerなど54店で売り出すとしています(Marketing-Interactive、Green Queen)。200gで19.90リンギット、たんぱく質は100gあたり16.6〜18.5gです。同社はマレーシアを選んだ理由の1つに、たんぱく質の多い食品への関心の高まりを挙げています(Green Queen)。
セラー視点: タイで伸びている中心は、そのまま飲める乳飲料(植物性を含む)で、越境で送る商品ではありません。押さえておきたいのは、アイスやお茶のチェーンが、「たんぱく質○g」やカロリー・栄養表示を前に出す例が今週2件出たことです。なお、Nene Royalを起用したDutch Millは高たんぱく牛乳の主要ブランドの1つですが、起用したのは飲むヨーグルトのほうです。
TSUTAYA BOOKSTORE、10月20日にバンコク1号店。マンガ売り場と日本の雑貨も
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は9月8日、タイ1号店となるTSUTAYA BOOKSTOREを10月にバンコクの複合施設One Bangkokに開くと発表しました。CCCと双日の合弁会社TSUTAYA BOOKS Malaysiaが、80店超を持つタイの書店チェーンAsia Books(タイの複合企業BJCの子会社)と組んで出店します。出店の理由には、タイで日本のアニメ、マンガ、キャラクター、商品、ライフスタイルへの関心が高いことを挙げています(CCC)。
開業日は10月20日です。2フロアで1,000平方メートルを超え、タイ語と英語の本・雑誌を5万点以上置きます。15,000冊超の児童書売り場、マンガ売り場とアニメ・マンガの公式グッズ、日本の文具や生活雑貨、デザイン雑貨も扱います(The Nation Thailand)。同チェーンは2022年にクアラルンプールで東南アジアに進出し、マレーシアでは3店になりました。TSUTAYA BOOKS MalaysiaのCEOは日経に対し、タイはIP関連の商品を広げる余地が大きいと述べ、タイでの追加出店も検討しているとしています(Inside Retail Asia)。
セラー視点: バンコク中心部の大型書店で、日本のIPグッズと文具が正規品として並ぶことになります。文具は、9.9でShopee Japan経由の日本の越境セラーの注文数が前年比83%増えたカテゴリーです(伸びを引っ張ったのはフィリピン、9月28日号)。同じカテゴリーを越境で出しているなら、開業後の店頭の品ぞろえと価格は、自分の値付けを見直すときの比較材料になります。
短信: 次に見ておきたい動き
- Nene Royalの起用の続き: The Nationは、Farmhouseとの企画の詳細はこれから明かされる予定で、Dutch Millも追加の告知がありそうだと報じています(The Nation Thailand)。起用した商品で、売上や品切れの数字が出るかを見ます。
- TSUTAYAの開業: CCCは、サービスや売り場の詳細を10月の開業時に発表するとしています(CCC)。
今週の出来事の網羅は週刊ダイジェスト2026年10月5日号にまとめています。
