今週の東南アジアは、需要の話と天気の話が重なりました。インドネシアのスマトラ島・カリマンタン島の火災による煙(ヘイズ)がマレー半島とシンガポールを覆い、マレーシアでは6州・地域で学校が休校になりました。シンガポールでは家電量販店で空気清浄機の売上が伸びています。日本の8月の食品輸出ではタイ向けが前年同月比+63.3%でした。物価と消費者心理では、フィリピンの物価が7.2%に加速し、タイの消費者信頼感が4か月ぶりに下がっています。家計支援、10.10の会期、短信の順にまとめます。
ヘイズでシンガポールの空気清浄機に需要、マレーシアは6州・地域で休校
シンガポールの家電量販店が中国語紙・聯合早報の取材に答えた内容をMothershipが伝えています。Gain Cityは9月の空気清浄機の売上が8月比で**+76%**だったとしており、人気機種は毎週補充しているそうです。Courtsは直近3〜4週間の売上が4倍超、Audio Houseはヘイズのない時期と比べて倍増と答えました。客の関心は、PM2.5や花粉を除去できるかどうか、CADR(1分あたりの清浄空気量)、フィルターの寿命と交換頻度に向かっているとのことです(Mothership)。いずれも各社の口頭の説明で、比較の基準は会社ごとに異なります。
政府側の動きも出ています。国家環境庁(NEA)など28機関でつくるヘイズ対策本部は10月9日、24時間PSI(大気汚染指数)が136〜192と「Unhealthy」の範囲にあり、200を超える可能性があると発表しました。「Very Unhealthy」に入った場合は、高齢者や持病のある人などにN95マスクを配り、一部の交通拠点にマスクの自動販売機を置くとしています。一方でNEAは、小売業者の倉庫と政府の備蓄にN95マスクの在庫は十分あると説明しています。学校では教室を閉め切り、空気清浄機を稼働させる運用です(Mothership)。同じ9日朝、シンガポールはスイスの大気質モニターで「最も汚染された世界の主要都市」とされました(Malay Mail)。
マレーシアでは、9日午後2時時点で環境局の観測地点のうち9か所が大気汚染指数(API)180を超え、最も高いスレンバンは189でした。180は記事中で「critical」とされる水準で、区分上はいずれも「unhealthy」(101〜200)の範囲です(Malay Mail)。9日はジョホール、ムラカ、ヌグリ・スンビラン、セランゴールの4州とクアラルンプール、プトラジャヤ、パハン州ロンピン郡のすべての学校が休校となり、在宅学習に切り替わっています(Malay Mail)。
日本の食品輸出: 8月はタイ向け+63%、マレーシア向け+37%
農林水産省が10月2日に公表した8月の農林水産物・食品の輸出額は1,363億円で、前年同月比+14.5%でした。東南アジア向けは国で差があります。**タイ向けは87億円で+63.3%**と、増加額は米国に次ぐ2番目です。主にかつお・まぐろ類と牛肉が増えました。マレーシア向けは29億円(+36.8%)、シンガポール向けは49億円(+13.2%)でした。ベトナム向けは84億円で-2.7%と減っており、かつお・まぐろ類、ホタテ貝、さけ・ますが減少しています。品目別では、緑茶が92億円(+57.3%)で増加額が最も大きく、主な増加先は米国、マレーシア、ドイツでした。牛肉の増加先には台湾、タイ、ベトナムが並びます(農林水産省)。
1〜8月の累計では、ベトナム向けが711億円(+26.8%)、タイ向けが560億円(+17.3%)、シンガポール向けが425億円(+19.2%)、マレーシア向けが236億円(+36.4%)です。1つ注意があります。この月次統計は財務省の貿易統計にもとづいており、1品目20万円以下の「少額貨物」は含まれていません。少額貨物は年2回の別集計で、1〜6月分は526億円(+5.0%)でした(同資料)。小口で出荷される越境ECの動きは、月次の国別の数字には出にくいということです。9月分は11月4日13時に公表される予定です(農林水産省)。
日本ブランドの現地販売では、ファーストリテイリングが10月8日に8月期の決算を発表しました。海外ユニクロ事業のうち「韓国と東南アジア・インド・豪州地区」の売上収益は8,094億円(前期比+30.7%)、事業利益は1,683億円(+44.0%)です。東南アジア・インド・豪州地区も2桁の増収増益で、同社は商品構成や販売計画の改善を要因に挙げています(ファーストリテイリング)。
物価と家計: フィリピンは7.2%に加速、タイの消費者心理は4か月ぶりに低下
フィリピン統計庁(PSA)が10月6日に公表した9月の消費者物価は、前年同月比**+7.2%**でした。8月の6.1%から加速し、4月と並ぶ水準です。1〜9月の平均は5.4%でした(PSA、GMA News)。先週号で紹介したエコノミスト予測の中央値6.7%を上回っています。PSAの説明では、食品・非アルコール飲料が6.7%(8月4.6%)に上がり、上昇幅の73.4%を占めました。野菜・根菜・バナナ・豆類は前年同月比+10.7%(8月は-3.4%)です。住居・光熱は8.4%、運輸は14.6%でした。経済計画開発省は、悪天候による食品供給の乱れと世界的な原油高を要因としています(GMA News)。
タイ商工会議所大学(UTCC)が10月8日に発表した9月の消費者信頼感指数は52.1で、8月の53.2から4か月ぶりに低下しました。調査は全国2,241人が対象です(UTCCの発表を伝えたNaewna、Bangkok Biznewsによる)。要因として、洪水(経済損失220億〜300億バーツと試算)と、9月末に1リットル40バーツを超えた軽油価格を挙げています。現在の生活費に関する指数は18.3と低く、車や住宅など大きな買い物に慎重になっているとしています。支えになる材料には、政府の給付策「タイ人助け合いプラス」の2か月延長(月平均500バーツ)と、付加価値税7%の1年据え置きを挙げました。UTCCは、10月中に洪水が落ち着けば、11月中旬から消費と観光が平常に戻っていくとの見方です(The Nation Thailand)。
インドネシアでは、中央銀行のインドネシア銀行が10月8日に公表した9月の消費者信頼感指数が118.1でした。100を上回れば楽観を示す指数で、8月の118.5(8月分の発表)からわずかに下がりました。消費者期待指数(IEK)は128.7(8月127.6)に上がった一方、現在の経済状況指数(IKE)は107.5(同109.4)に下がっています(インドネシア銀行・消費者調査)。翌9日の小売売上調査では、8月の実質売上指数が前年同月比+1.3%(7月+1.1%)、前月比+0.8%でした。独立記念日の需要が下支えしています。9月は前年同月比+1.4%の見込みで、その他の商品、その他の家庭用品、文化・娯楽用品の伸びによるものです。前月比では食品・飲料・たばこの落ち込みで-2.3%の見込みです。小売業者は、11月と2027年2月にかけて物価上昇の圧力が強まるとみています(インドネシア銀行・小売売上調査)。
シンガポールでは、証券会社CGS Internationalが8月の小売統計を分析しています。7〜8月の訪問者数は4〜6月期の平均を約29%上回ったのに、小売売上は2.9%増にとどまりました。8月の百貨店は季節調整済みの前月比-1.5%、時計・宝飾は-7.8%で、観光客に近い区分が弱かったとしています(Retail Asia)。
マレーシア2027年度予算: 給付(STR・SARA)を拡充、最低賃金は2,000リンギへ
アンワル首相兼財務相は10月9日、2027年度予算案を下院に提出しました。現金給付のSTRと生活必需品の購入支援SARAの総額は、160億リンギ(今年は150億リンギ)に増えます。STR受給者には全員に月最大150リンギ(年1,800リンギ)のSARAを支給し、対象は最大900万人です。受給者以外の18歳以上には、ハリラヤ・アイディルフィトリ前と第70回独立記念日に合わせて100リンギずつ2回支給し、対象は最大1,300万人です。SARAは全国216か所の農産物市場でも使えるようになります。最低賃金は2027年6月から1,700リンギを2,000リンギに引き上げますが、年商5,000万リンギ未満の中小零細企業は対象外です。個人の基礎控除は9,000リンギから1万2,000リンギに上がります(マレーシア財務省)。
セールカレンダー: 10.10はシンガポールが17日まで、11.11の会期は公式発表待ち
10.10は国によって会期が違います。Shopeeマレーシアの「10.10 Brands Festival」(Shopeeマレーシア)と、Shopeeフィリピンの「10.10 Sale (Oct 1-11)」(Shopee Philippines・App Store)は、告知上の会期が10月11日まででした(延長の有無は未確認)。Shopeeシンガポールは10月12日時点で、公式ページに「HAPPENING TILL 17 OCT」と表示しています(Shopee Singapore。セール情報サイトのMiss Lobangも会期を10月1〜17日としています)。10.10の実績値は、10月12日時点でどの国からも公式発表を確認できていません。タイの菜食祭は10月18日まで続きます(The Nation Thailand・9月28日)。UTCCは観光の繁忙期とともに経済活動を支える材料に挙げています(The Nation Thailand・10月8日)。
11.11の2026年の会期を示す公式告知は、10月12日時点で確認できた範囲ではまだ出ていません。セールカレンダーは、終了したAmazonシンガポールのPrime Big Deal Days(10月6〜8日、Amazonシンガポール)を「直近の実績」へ移し、10.10の会期の状況を国別に更新しました。
短信
- マレーシア、EC法案を次の国会へ: 予算演説でアンワル首相は、ネット上のプラットフォームと出品者の責任を強める「E-Commerce Bill」を次の国会会期に提出すると表明しました。外国のEC企業が十分な監督なしに国内市場に入っていることへの小規模事業者の懸念を受け、地場の中小零細企業を不公正な競争から守り、購入される商品の安全を確保するための法的措置と執行策を検討するとしています(マレーシア財務省、The Star)。対象となるプラットフォーム、罰則、施行時期は示されていません。海外から買う500リンギ以下の商品にかかる10%の売上税(2024年1月導入)にも、今回の予算で変更はありません(RinggitPlus)。若手事業者のネット販売を支えるNADIには1億4,200万リンギが配分されます(予算演説)
- ShopeeアプリにAIアシスタント「Migoo」、一部ユーザーから順次展開: Shopeeシンガポールのヘルプセンターによると、個人向けAIアシスタント「Migoo」をShopeeアプリのホーム下部のナビゲーションから使えるようにしており、安定稼働のため一部のユーザーから順次展開しています。商品検索や、ニーズに合わせた商品の推薦のほか、メールやカレンダーの管理にも使えます。利用にはGmailアカウントでの登録が必要で、1日ごとの利用ポイント枠があり、超えた分はMigooのアプリかWebでポイントを買うか翌日を待つ仕組みです。機能はアプリから削除できませんが、使わない選択はできます(Shopee Singapore ヘルプセンター)。Momentum Worksは10月5日の記事で、Migooは同社が6月に取り上げた時点ではShopeeのブランドを出していなかったSea Groupのサービスだと説明しています。アプリ内では「Shop AI assistant」と名乗り、「お得を探す」「ファッションのトレンド」などの入力候補が出ます。同社のシンガポールのスタッフが見つけた一方で、別のスタッフや、話を聞いたよく買い物をする利用者数人の画面には出ていませんでした(The Low Down)
- Cube×Lazadaの買い物客調査、ベトナムで国別結果: 9月28日号で紹介した6か国調査について、10月6日にホーチミン市で発表会が開かれました。ベトナムでは「Savvy(目利き)」層の一歩手前の人が22%おり、足りない項目は商品・出品者の確認が最も多いとされます。Savvy層の91%が購入前に商品や出品者を確かめ、59%が予算の半分超を公式ブランドストアに使っています。Lazadaベトナムは同じ場で、9.9では100米ドル超の注文がGMVの42%を占めたと述べました(Viet Nam News)。Lazadaとの共同調査で、支出額は回答者の自己申告にもとづきます
