今週は、域内のデジタル経済を毎年推計しているGoogle・Temasek・Bain & Companyの「e-Conomy SEA」2026年版が出ました。EC(物販)の流通総額は2026年に2,260億ドル、前年比18%増の見通しです。買い物の入口としてAIを使う人が増えているという調査も載っています。シンガポールでは食品の即時配送の注文が伸び、コンビニは温かい食事を広げています。台湾は9月の小売が前年同月比8.5%増でした。マレーシアでは日本・韓国・中国の美容を集めたWatsonsの大型店が開き、韓国のCJ ONSTYLEはシンガポールなどでオンラインモールを始めました。11.11はShopeeマレーシアが10月26日に開幕しました。セールカレンダーと短信を末尾にまとめ、インドネシアのECモールによる課税の開始時期について過去号の記述を訂正します。
域内EC: 2026年は2,260億ドル(+18%)の見通し、買い物の入口にAI
Google・Temasek・Bain & Companyは10月21日、東南アジアのデジタル経済に関する年次報告「e-Conomy SEA 2026」を公表しました。2026年の流通総額(GMV)は全体で3,680億ドル、前年比17%増の見通しです(Google)。このうちECは2,260億ドル(+18%)で、2030年に4,090億ドル、2035年に8,200億ドルになると推計しています(e-Conomy SEA 2026)。今年の版はブルネイ・カンボジア・ラオス・ミャンマーを含む10か国を対象にしています。2025年のEC流通総額は、主要6か国では1,880億ドル、10か国では1,910億ドルです。ECの推計には、統計の取れない非公式の取引は含みません。
報告は伸びの理由として、シンガポール・マレーシア・タイなどではロイヤルティ制度、送料無料の条件、ブランド品の品ぞろえが購入額と頻度を押し上げていることを挙げます。シンガポールでは小売売上に占めるネットの比率が約16%に達しました。即日配送や2時間配送、クイックコマースについては、日々の衝動買いや高価格帯の消費の新しい経路になっているとしています。プラットフォームごとの見立ては、Shopeeが物流と会員特典で利用を深め、TikTok Shopは衝動買い中心から総合的なモールへ広がり、Lazadaは単価の高いブランド中心の販売に軸足を移している、というものです。
セラーに関係が深いのは、買い物とAIに関する調査です(Google・YouGovが2026年7月に主要6か国のAI利用者9,006人を対象に実施)。69%がAIで商品を比較し、31%が画像・動画・音声で商品を探しています。買い物の起点は、単独のAIアプリが19%でした。AIの推薦を受けた後も、9割超がさらに調べたりレビューを確かめたりしています(Think with Google)。起点としてはSNSと検索エンジンがそれぞれ約25%で、なお上回っています(e-Conomy SEA 2026)。報告は、高解像度の画像と整った商品データがECの基盤になっていると指摘しています。プラットフォーム側の例としては、Shopeeが商品ページの改善や動画、バーチャル試着などのAIツールでコンバージョンを前年比10%高め、問い合わせの約8割をAIのチャットボットが受けていること、Lazadaでは95%超のセラーがAIの出品作成機能を使っていることを挙げています。いずれも報告が公開情報などから引いた例です。
報告は、AIが役立つのは高額品の検討だとしています。電子機器やベビー用品のように仕様の比較が要るカテゴリーではすでにAIが使われ、家具や高級品・宝飾品のようにクリエイターの発信が需要をつくる分野でも、今後は判断の確認にAIが使われるとみています。セラーは今のところ、プラットフォームに組み込まれたAIを出品の管理、広告の入札、顧客対応に使っています。プラットフォームはAIを使った広告やセラー向けの有料サービスで手数料収入(テイクレート)を引き上げていると報告は書いています。ECや旅行、スーパーアプリが自社の利用者に向けて売る広告(コマースメディア)について、報告は「5年で約40億ドルの広告市場が生まれている」と書いています(5年の起点は明記されていません)。それでも広告収入は流通総額の1〜3%で、米国のAmazonの9〜10%を大きく下回ります。
シンガポール: 30分配送の食品注文が6倍に、コンビニは温かい食事を拡大
Lazadaグループのネットスーパー、RedMartは、2月に始めた最短30分の食品配送「RedMart Now」の1日あたりの注文数が6倍になったと明らかにしました。8月に北部・北東部、10月に東部へ配送地域を広げ、全国展開を目指しています(西部と中部の一部はまだ対象外)。物流拠点を新設し、RedMart Nowの配送車両は4倍にしました。通常の予約配送に比べて、青果・乳製品・チルド食品・肉・魚の比率が高く、注文は営業開始の朝7時から入り始めるといいます。予約配送の取扱品目は12万点超ですが、RedMart Nowの品ぞろえはそれより絞っています。食品の注文全体に占めるRedMart Nowの割合は公表していません(Retail Asia)。
セブン-イレブン・シンガポールは、店内で温かい食事を出す「Foodbar」を16店に導入します。大きな店では丼を自分で組み立てる形式、ほかの店ではピザやクロワッサン、パンケーキ、ワッフルなどの温かい軽食を出します。調理済み食品の品ぞろえは130品目を超えました(Inside Retail Asia)。同社がコンビニの利用者1,020人に行った調査では、68%が週に数回以上手早い食事をとり、75%が今後さらに簡便な食事に頼ると答えました。平日の夕食を何にするか決めにくいという人は43%です(Retail Asia)。
9月の消費者物価は、総合が前年同月比2.2%、コアが2.0%で、いずれも8月から下がりました。小売品などは家具の値下がりと衣料の上昇幅の縮小で1.2%(8月は1.8%)に鈍りました。一方、食品は調理していない食品(食材)と外食の両方で上昇率が高まっています。金融管理局(MAS)は、エネルギーと食品の輸入価格の上昇圧力が当面続くとみています(MAS)。
台湾の9月小売: +8.5%、7〜9月のネット販売は+7.9%
台湾の経済部が10月23日に公表した9月の小売業売上高は4,301億台湾ドルで、前年同月比8.5%増でした。中秋節の連休の買い物と贈答需要、百貨店の改装と新しい商業施設の開業、スマートフォンと家電の好調を理由に挙げています。業態別では、車市場の持ち直しで自動車・二輪車の小売が20.3%増と最も伸び、ネット通販・通信販売と百貨店がともに7.9%増、量販店が12.5%増、情報通信機器・家電が9.4%増、コンビニが4.4%増でした(中央社、壹蘋新聞網)。
四半期ごとに出るネット販売額は、7〜9月期が1,781億台湾ドル(前年同期比7.9%増)でした。衣料・服飾品小売業のネット販売額が14.3%増と伸びが目立ちます。小売全体に占めるネット販売の比率は14.1%です。経済部は、10月は百貨店の周年セールが山場に入り、小売の伸びが続くとみています(壹蘋新聞網)。経済部統計処のサイトは編集部の環境から開けなかったため、数字は経済部の発表を伝えた報道によります。ネット通販・通信販売の9月の伸び率と、7〜9月期のネット販売の数字は壹蘋新聞網の報道だけで確認しています。
美容と韓国の通販: Watsonsの最大店舗に日韓中の売り場、CJ ONSTYLEは抹茶が売れ筋に
Watsonsマレーシアは10月17日、クアラルンプールのブキッ・ビンタンにあるIsetan Lot 10に、国内最大の店舗「Watsons Plus」を開いたと発表しました。広さは1万8,000平方フィート超、扱う商品は1万7,000点超で、同国で888店目です(Malay Mail)。運営するAS Watsonグループのリリースによると、店内には日本・韓国・中国の美容トレンドを並べる「Beauty Verse」のほか、「K-Health」、エイジングケア、睡眠、ヘアケアなどの売り場があります。同グループは、この形式をアジアのほかの市場にも広げられるとみています(AS Watsonグループ)。
韓国のCJ ONSTYLEは10月15日、韓国の生活関連商品を扱うオンラインモールを米国・香港・シンガポールで始めたと発表しました。年内にフランス・日本・台湾へ広げる予定です。芸能人やクリエイターの動画から購入につなげる作りで、初期の売れ筋は美顔器、小ぶりのボストンバッグ、有機抹茶だといいます。ベトナムでは、Shopee Liveでの販売を広げる計画です(The Herald Business)。Retail Asiaも、売れ始めた商品として美顔器や有機抹茶を挙げています(Retail Asia)。抹茶の域内需要は抹茶の特集にまとめています。
セールカレンダー: 11.11はShopeeマレーシアが10月26日、シンガポールが30日に開幕
Shopeeマレーシアは公式アプリの説明文で、11.11 Big Saleの会期を10月26日〜11月12日としています。即日配送(Buy Today, Get Today)、VIP会員向けの30%オフのバウチャー、ライブ配信の視聴で当たる総額1,100万リンギのバウチャーを打ち出しています(Shopee マレーシア)。Shopeeシンガポールも公式アプリで、会期を10月30日〜11月17日、最大90%オフの商品を毎日出す期間を10月30日〜11月13日と表示しています。対象ブランドの350ドル以上の購入に使える111ドル引きのバウチャーや、VIP会員への3%のキャッシュバックがあります(Shopee シンガポール)。いずれも10月26日時点の表示です。
ほかの国のShopeeと、Lazada、TikTok Shopの11.11の会期は、10月26日時点で公式の告知を確認できていません。セールカレンダーの11.11には、マレーシアとシンガポールの会期を加えました。インドネシアのHarbolnas(12月10〜16日)とマレーシアのディーパバリ(11月8日)は前号から変わりません。
短信
- フィリピン、オンライン事業者の登録シールの掲示は10月31日まで: 内国歳入庁(BIR)は、オンライン販売者やコンテンツ制作者などに求めている登録シール(Registration Seal Badge)を、ウェブサイト・ECページ・SNSに掲示する期限を10月31日としています。10月14日時点で5万2,700件超が取得済みです(GMA News)。期限の延長は9月24日付の通達(RMC No. 99-2026)によるものです。シール自体は無料ですが、30ペソの印紙税がかかります。オンラインの登録システム(ORUS)か管轄の税務署で取得できます(Context.ph)。TikTok Shopフィリピンが出品者に求めている表示は前号で取り上げました
- Shopeeの親会社Sea、クラウド事業の開始と金融子会社の上場検討を表明: Seaの創業者フォレスト・リー氏は、上場9周年の10月20日に社員へ送ったメールで、社内で10年以上運用してきたクラウド基盤を外部の企業に提供する「Sea Cloud」を始めること、金融事業Moneeの上場を検討していることを明らかにしました。同じメールで、直近の四半期のShopeeの流通総額を383億ドルとしています(Sea Limited)
- 台湾の公正取引委員会、Grabによるfoodpanda台湾の買収を認めず: 公平交易委員会は10月21日、Grabによるfoodpanda台湾事業の買収を禁止しました。台湾の料理宅配はfoodpandaとUber Eatsの2社が主導しており、Uber Eatsを運営するUberがGrab株の約13.1%を持つことなどから、買収後に両社が競い合う動機が弱まると判断しました。Grabが示した持ち株の希薄化などの是正策も不十分としています(自由時報、Retail Asia)
訂正: インドネシアのECモールによる所得税の徴収は10月に始まっています
9月28日号の訂正で「出品者の売上からの源泉徴収は11月1日開始の方針」と書き、9月22日号も同じ内容に修正しましたが、実際には10月に始まっていました。財務省税総局(DJP)は8月、制度の適用を10月31日まで延ばし、11月1日から始めると告知していました(DJP)。その後、税総局長は10月1日、制度の評価とECモール側の準備状況をふまえて徴収を10月1日から始めたと説明しました。徴収するのはShopee・Blibli・Tokopedia・Lazadaの4社で、9月下旬の税総局長決定で指定されています(Katadata)。各社は自社のページで、10月2日0時(ジャカルタ時間)以降の取引から売上の0.5%を徴収すると告知しています(DDTCNews)。対象は国内の出品者で、年間売上が5億ルピア以下の個人は申告書を出せば徴収されません。9月28日号は9月18日の税総局長の発言をもとにしており、その後の決定を確認できていませんでした。お詫びして訂正します。
